授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

熊本県 山江村立山田小学校、山江村教育委員会

作品を共有して学び合いの精度を高める

 タブレット活用でさらに生きる〈新聞制作〉

 

 

5年先、10年先を

 見据えた学力を育むために


〈伝えるチカラ PRESS〉活用事例 

2013/03掲載

【活用ソフト】
表現活動支援ソフト

伝えるチカラPRESS

 

 

<伝えるチカラPRESS>は、活用型学習の授業を支援する新しいコンセプトのソフト。
表現活動支援ツールとして「新聞制作」「プレゼン」「ニュース制作」「リーフレット制作」の4つのアプリケーションで構成される。他、校内研修用「研修パッケージ」が授業での活用を支援します。

【今回の活用アプリ】
●新聞制作

「伝えるチカラPRESS」を基本ツールとして、
タブレットPCによる新しい学習スタイルの創造

 

タブレットPCをグループで活用

パーソナルな側面が強いタブレットPCをグループで活用し、作品閲覧・意見交換・修正作業へとスムーズに展開できる新しい「学びの共有」を実現している。



自分たちが住む熊本県をテーマ別に紹介した学習で、「伝えるチカラPRESS」の〈新聞制作〉が活用された。

 パーソナル端末として手軽に活用できるタブレットPCは、ビジネスシーンを中心に人気となっている。この個人ツールとしてのイメージが強いタブレットPCを「グループ活動」の場面に使用するという発想は、なかなか思いつかない。その新しい視点でタブレットを活用している学校が熊本県にあった。
 山江村立山田小学校は、昨年、文部科学省委託「国内ICT教育活用好事例の収集・普及・促進に関する調査研究事業」の九州・沖縄ブロック研究発表の場で「ICT教育活用の研究」を行った。その公開授業で子どもたちは、ひとつのタブレットを囲むように覗き込み、作品を鑑賞し意見交換を行い、発表に結びつけていた。
 この学習シーンが、実は今までにないスタイルだったのである。パソコン室を飛び出してタブレットPCを持って調べ学習に出かけたり、提示・発表ツールとして活用する方法が一般的と思われていたところに、山田小学校では、学び合いのためのツールとして活用されていたのである。
 ひとつの画面を取り囲むように覗き込みながら、子どもたちはグループ内の意見をまとめていく。友達がつくったものを手元のタブレットPCで表示して共有するという感覚。さらに、その場で意見交換を行うという言語活動が連動することで、子どもたちは学び合いの精度を高めていった。この学習スタイルが、ICT活用の新しい姿を提示しているのである。

「わかりやすく伝えよう」とする意識の変化

タブレットPCと無線LANで結ばれた電子黒板は、一斉提示や発表のためのツールとして活用されている。毎朝、電源が入れられ子どもたちも自由に活用できるようになっている。



現在、6年生では、修学旅行の思い出新聞を作成中。

 「伝えるチカラPRESS」の〈新聞制作〉を、子どもたちがはじめて触ったのが昨年の10月。そこからわずか2ヶ月ほどで、4年生は作品を完成させた。情報研究主任の恒松龍治教諭は、「修正や追加などを瞬時に行える手軽さが〈新聞制作〉にはあります。タブレットPCで友達の作品を見て、それを瞬時に自分の作品に反映できるスピード感も子どもたちにとっては有効だったと思います。思いついたことをすぐに行動に移せることが、従来の手書きによる新聞制作と比べても新鮮だったのではないでしょうか。」と振り返る。
 また、子どもたちは、〈新聞制作〉やタブレットPCの活用を通じて、「自分のノートも見られるものとして意識するようになった」(恒松教諭)という。それによって、普段のノートそのものがきれいになったという。しかも、文字だけでなく、イラストや図解などを盛り込んだノートを描くようになったというように、学び合いの成果の広がりが顕著になっている。

ICT活用で授業改善を促進

相撲大会が開催される土俵が校庭にある。心も身体もたくましく育っているようだ。

 山田小学校の今年度の研究テーマは「児童の思考力・表現力の向上を支えるICT活用の在り方」となっている。具体的には、(1)子どもの学びを生み出す「提示・説明」の工夫 (2)子どもの学びを広げ・深める「考えの共有」の工夫 (3)子どもの学びの姿が見える「言語活動」の工夫の3つの視点で取り組んでいる。
 こうした活動を積極的に推進するために、校内研修にも力を入れ、年間36回実施されている。すべては、「授業改善」のためであるという。藤本誠一校長によれば、「授業改善は、時代に関係なく学校や教員にとって大切なテーマです。ICTを活用することで、教員がこれまでに培ってきたものがさらに広がるのではないかと期待しています。」と、授業改善に意欲的に取り組んでいる。
 こうした方針の下、これまでの取り組みは、すぐに子どもたちの変化へとつながっていった。ノートをきれいに描くようになったのをはじめ、家庭に帰っても子どもたちが授業のことを話すようになったという感想が多くの保護者から寄せられたという。
 さらに、授業参観でもICTを活用するようになり、実際に保護者も「新しい授業が行われている」と実感しているようである。昨年の研究発表では、見学に訪れた地域の方からも「山田小学校の子どもたちが積極的に発表している姿を見て頼もしく感じた」という意見が寄せられている。
 恒松教諭によれば、「ICTを活用して発表を行い、子どもたちは自然と自信を抱くようになっているのではないでしょうか。表現する力も身に付いていると思います。教えることから、学ぶという姿勢が芽生えているのかもしれません。」と振り返る。
 子どもたちの学習を支援し、教師が実践したい授業をより手軽に実現するためのソフト「伝えるチカラPRESS」を基本ツールとして、タブレットPCによる新しい学習スタイルの可能性を見出しつつある山田小学校。5年後には、こうした使い方が広く普及していることも予測される。そのはじまりはここだった、といつか振り返ることになるのかもしれない。

 

藤本誠一 校長

学校のトップとして、強いリーダーシップを持ってICT教育をすすめている。


恒松龍治 教諭

研究主任としてICT活用に積極的に取り組んでいる。タブレットPCの新しい活用方法で「学び合いの共有」を推進している。

 

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