インタビュー&コラム

Dialog

堀田龍也先生、高橋純先生

これからの学校教育における‘コミュニケーション能力’育成の必要性とその意義
~プレゼンテーション活動と交流学習~

堀田 龍也 静岡大学 情報学部情報社会学科(教育情報システム研究室)・助教授
高橋 純 
富山大学 教育学部教育情報システム学教室・講師)

(2004/07掲載)

2005年(平成17年度)を目標に,コンピュータ教室だけでなく普通教室や特別教室にもコンピュータが配備されようとしています。これに伴って,各学校へのプロジェクタの導入やネットワークの高速化が準備されています。
このような環境が整う中,スズキ教育ソフトでは,キューブシリーズを一新し,新たな教育用ソフトウェアをお届けすることになりました。それが教育用プレゼンテーションソフト「キューブプレゼン」(※キューブきっず,キューブNextに含まれます。)や地域交流学習システム「キューブコミュニティ」です。
これらの製品の開発に深く関わっていただいた堀田先生と高橋先生に,2005年の教室での学習活動のイメージについて語っていただきました。


キューブプレゼン  

プレゼンテーション活動

高橋 学校現場にプロジェクタが整備され始めています。プロジェクタをどのように使うことが一番期待されているのでしょうか。

堀田 プロジェクタは,先生が「わかる授業」をするために使うことが強く期待されています。つまり,普段の一斉授業における,教材を提示する道具として考えていけばいいでしょう。すでに,パソコンや教材提示装置をプロジェクタにつないで,授業をよりわかりやすくする ということに関して,実践の開発が進んできています。

高橋 なるほど。一方で,プロジェクタは子どもが使うということも考えられますよね。子どもたちの発表・プレゼンテーション活動ということがすぐに思いつきます。

堀田 そうですね,子どもが調べてきたことを,みんなの前でプレゼンテーションするという活動は最もポピュラーなものだと思います。

高橋 プレゼンテーションの能力というのは,やっぱりこれからの時代の子どもたちには必要なんでしょうね。

堀田 ぼくはプレゼンテーション能力を身につけさせることは,これからの時代の基礎学力の1つだと思っています。自分の考えを,他者にうまく伝えるというコミュニケーション能力は,これからの時代に生きてゆく子どもたちにとって,最も重視されている学力の1つです。このコミュニケーション能力の1つにプレゼンテーション能力があります。国語科で注目されている「伝えあう力」もこの範疇に入るでしょうね。

高橋 最近では,学校で子どもたちにプレゼンテーションをさせている場面をよく見かけます。でも,そういう活動を見ていて問題を感じることもあります。まだきちんとした指導法は確立していないのでしょうが,1枚1枚のスライドの作りこみばかりにかなりの時間をかけてしまう子どもたちもいるようです。

堀田 ご指摘のとおり,どうもプレゼンテーション能力を身につけさせる学習と,プレゼンテーションソフトの使い方の学習が勘違いされている感じがあります。

高橋 たしかに混同している人はいますね。

堀田 スライドの字を大きくするとか,アニメーションで文字を飛ばすとか,画像を回すとか,音を出すとか,そういう操作ばかり覚えてもあまり意味がありません。「それで,結局,あなたは何を伝えたいの?」ということに目がいかずに,スライドの派手さばかりが強調されているようです。子どもたちのプレゼンテーション能力を鍛えるという点に目がいっていない場合はかなりあります。

高橋 子どもたちにプレゼンテーション能力をつけさせるための指導方法には,コツがあるんでしょうか。

 


キューブコミュニティ

交流学習

堀田 冒頭でコミュニケーション能力という話が出ましたが,これからはネットワークを通して相手に自分の考えを伝えるということがますます多くなっていきます。ネットワーク経由で他の人とコミュニケーションするという力も大切になりますよね。よくいわれる交流学習の実践は ,学校外の人と交流をしながらこの能力育成も狙っていますね。

高橋 コミュニケーション能力には,プレゼンテーションのように目の前に人がいるタイプのコミュニケーション能力と,ネットワークを通したコミュニケーションのように,距離が離れた人とメディアを経由して自分の伝えたいことが伝えられるコミュニケーション能力の両方があると思います。

堀田 いずれも,これからの時代を生きる子どもたちには大事ですね。ただ,ネットワークを介してコミュニケーションするというのは大人でも難しいことですよね。特に子どもだと,いろんな行き違いを生んで,事件になっている例もありますね。

高橋 インターネット上には見知らぬ人や大人がたくさんいるようなところもありますが,いきなり大海原に出てゆくのは得策ではありません。ネットワークを介したコミュニケーションを学ぶためには,見守られている環境で,失敗しながら学んでいく環境,コミュニケーションの練習ができる「自動車教習所」のような環境が必要なんです。

堀田 それが「キューブコミュニティ」ですね。「キューブコミュニティ」はいままでの掲示板と比較して,どんな特徴があるのですか。

高橋 何より充実しているのは,先生が子どもたちを見守る機能です。先生がいつでも,どの子どもが何をいつ書きこんだかといったことが簡単に把握できるようになっています。

堀田 それは教育用のツールとしては必要な機能ですね。安全で安心なツールだといえるでしょう。しかし,コンピュータが得意でない先生でも,このツールを使った授業をすることが可能ですか。

高橋 もちろん可能です。これまでの交流学習の研究から,掲示板を使った授業には5つのパターンしかないことがわかっています。また ,交流学習を初めて実践する先生は,掲示板を使う実践が最も成功しやすいこともわかっています.そこで,「キューブコミュニティ」では,この5つの授業パターンをサポートできるようにしてあります。
たとえば,情報の発信をすること自体を体験し楽しむための授業パターンがあります。どんどん気軽に書いて,発信することのイメージをつかむことを狙っています。その次に,初めて他人にコメントをつけるような,意見交換をするという授業パターンに移っていきます。段階を追って,交流がうまくできるようになると,気象や植物など,お互いの観察記録を比較して意見を述べ合ったりする授業パターンも考えられます。

堀田 交流学習とひとことで言っても段階があるんですね。
「キューブコミュニティ」には,段階に応じたツールが用意されているということですね。

高橋 そうです。5つの授業パターンにあった,5つの掲示板が用意されています。先生は授業にあった掲示板を選ぶだけで,子どもたちにネットワークを介したコミュニケーションの体験をさせることができます。

堀田 5つの授業パターンというのは非常に有用だと思いますが,それでも初めての先生はいろんな事例を知りたいと思うでしょうね。

高橋 「キューブコミュニティで交流学習をはじめよう(※製品同梱の書籍)」には,これら5つの授業パターンにあわせた授業の事例が載っています。さらに交流学習の授業を上手に行うためのコツもたくさん掲載されています。このような授業づくりの情報を生かしてほしいと思っています。

 

「キューブプレゼン」と「キューブコミュニティ」は,時代の要請を受けて開発されました。この2つのツールは,これからの時代に生きる子どもたちに必要なコミュニケーションの能力が無理なく身に付くようさまざまな配慮がなされています。さらに,先生向けの実践事例を集めた書籍を用意し,先生方の指導にも役立ちます。
この2つのコミュニケーション能力育成をめざしたツールは,堀田・高橋両先生をリーダーとして全国からモニターの先生にお集まりいただき,設計段階から1年あまりをかけて,実践事例を集め,開発途中ではモニター校での授業活用を繰り返し,堀田先生,高橋先生の助言をいただきながら,子どもたちの目線・先生方の目線から修正を重ねて完成しました。
先生方のご協力を得て,スズキ教育ソフトが自信をもってご提供するこの2つのツール。これから全国の学校で,広く活用されますことを願っております。

スズキ教育ソフト株式会社

 

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