1 学校が統合される!この出来事を子どもたちに実感してもらいたい。
キューブの操作には普段から慣れている子どもたち
<キューブプレゼン>によるまとめ学習もスムーズに進行。「感謝祭」での発表の場面をイメージして様々な工夫が盛り込まれていく
今回、グランプリを獲得したのは、平成24年度末をもって市内東部小学校に統合される多久市立納所小学校の作品「ありがとうプロジェクト1〜ありがとう、納所小学校〜」である。これは、小学校3年生と4年生がまとまって授業を行う「総合」の時間を通じて実践した活動で、学校の大きな節目にスポットをあて、それを子どもたちにも強く感じてもらいたいという山口幸志先生の想いが詰まった学習である。
山口先生によれば、当初、子どもたちが学校統合に対してどのような気持ちを抱いているか推察することができなかったという。「子どもたちは柔軟性があります。新しい出来事を意外にあっさりと受け入れてしまうかもしれないと考え、もう一度この学校のことを見つめて欲しいという願いを込めて今回の学習を企画しました。また、子どもたちは学校の歴史や卒業生のことをあまり知らないのではないかという思いもあり、卒業した人達や地域の人達が感じているような学校への『愛着』や『好きという気持ち』を同じように実感してほしかったのです。」と学習を立案した時の想いを振り返る。
2 「感謝祭」での成果発表に向けて約40時間の学習計画が組まれた。
「総合」の時間を活用した学習は、約40時間で設定された。学習は3段階に分けられ、まず「学校を知ろう」という活動で昔の学校の様子を調査することからはじまった。
「調べていくうちに、この学校は自分達だけのものではなく、地域の人や卒業していった多くの先輩達の思い出が詰まった学校であることを知ることになります。そこからさらに興味が沸き、地域の人を講師として学校に招きお話を聞く学習機会もつくりました。」という山口先生。子どもたちの興味・関心が増していき掘り下げた活動に発展していったことがうかがえる。
次の段階では、調べたことをカタチにしていく活動が行われた。ここからはグループ活動に移り、発表する内容を絞りながら〈キューブプレゼン〉での作業に入っていった。今回の学習は、3年生と4年生が一緒に活動しているため、お互いに教え合ったり役割分担をしながら作業が進んでいったという。「〈キューブプレゼン〉の操作に関しては、子どもたちは普段の学習で慣れているため指導はほとんど不要でした。お互いに相談しながらスムーズに発表用の資料をまとめていましたね。」と山口先生。その後、発表に向けた練習などの時間がつくられ、成果物が完成していった。
3 気持ちを込めた発表で地域の人たちからも高い評価を得た「感謝祭」。
学校の金庫から発見された校歌の譜面
「発表会は少々緊張していたようです。」と笑う山口先生。
しかし、「準備・練習ともにしっかり行ったことで、子どもたちは気合い充分でした。」
平成23年11月27日に開催された「感謝祭」の発表会では、地域の人達から大変良い反響をいただいたという。山口先生によれば、「子どもたちは、お年寄りのために少し字を大きくしたり、聞き手を意識した発表を心がけるなど、随分と気持ちを込めた発表になったと思っています。自分達が調べたことを知って欲しいという想いが伝わったのではないでしょうか。」と学習の手応えを感じたという。
この発表会には、学校の金庫から発見されたという“手書きの校歌の譜面”がお宝として登場(作品名「校歌の秘密」)。その校歌を作曲した初代校長先生の家族の方を招くなどサプライズも追加され、印象的な「感謝祭」になったという。
納所小学校では、統合前の最後の年となる平成24年度は、「ありがとうプロジェクト1」の継続的学習として、“閉校式”に向けた活動を進める予定である。山口先生は、「最後の年に何を残せるか、どんな気持ちを持ち続けていけるのかを子どもたちなりに学習してほしいと考えています。ステップアップした活動で締めくくりたいですね。」と子どもたちの学習意欲に期待していた。
山口幸志先生
「大きな賞をいただいきありがとうございます。普段の学習が思いもかけず高い評価をいただいて、実感があまりわきませんが、学校の節目となる学習活動が成果を結び、大変感謝をしています。」
学校長 晴氣和明先生
「学校統合で納所小学校が閉校するのは残念なこと。地域の人にとってもさみしいことです。今回の学習で子どもたちが学校の歴史を知り、地域に対する想いを強く持つようになるとうれしいですね。」