実践報告
一般教員 管理職 教育委員会
それぞれの立場からの「校務の情報化」実践報告
『校務の情報化』を行ってみた教育委員会・学校管理職・現場教諭という,立場の違うそれぞれの先生から,どう変わったのかや実際何が良くなったのか等を発表していただきました。
一般教員の立場から
校務支援システム導入で変わったことは?
授業準備の時間を十分につくることができたり、
子どもたちとゆとりを持って向きあったりすることができるようになりました。
兵庫県三木市立自由が丘小学校 水野 ルミ 先生
本校では、平成20年度まで、自校式の通知表を発行していましたが、作成者が異動になり、メンテナンスや内容変更における不安が発生していました。そこで、校務の情報化を推進するためにも、校務支援システムを導入することになりました。
まず、空いた時間に少しずつ作業をしていくようにしました。名簿や出席簿、日々の記録など、データを蓄積し共有することで、学期末には欠席状況や所見欄も埋まっていることが多く、また、専科担当者も成績をつける際に、誤記入の心配がなくなりました。
この結果、学期末の校務時間は、従来に比べ短縮されました。また、時間的ゆとりが確保され、心に余裕ができ、授業準備の時間を十分につくることができたり、子どもたちとゆとりを持って向きあったりすることができるようになりました。学校の校務専用に開発されたソフトだからこその成果であると思います。
管理職の立場から
“校務の情報化”を学校経営に活かす、業務フローの改善とは?
学校経営者として、
先生の多忙感を解消するための取り組みです。
札幌市立山の手南小学校 校長 新保 元康 先生
本校にはICTに詳しい先生が少なく、校内アンケートでも81%が「表計算ソフトが苦手」という結果が出ています。また、近年、勤務時間も長くなる傾向にあり、残業が常態化するなど健康面でも心配していました。
こうした中、学校長として、校務の効率化を目指したいという願いを持っていました。また、通知表の改訂にも取り組む計画を掲げ、学校専用に開発され、簡単に運用できる校務支援システムを実験的に導入しています。現在は、名簿作成、成績処理、出席簿について運用中です。
出席簿に関しては、担任が健康観察カードに記入し、それを養護の先生が入力しています。これによって入力ミスも減ると同時に迅速に集計が完了するなど効果があらわれています。今、教職員の多忙感は増すばかりです。しかし、私は、先生には子どもたちに学習を教えるという本来の仕事をさせたいと思っています。そのためにも、安心して使える校務支援システムを導入して工夫ある運用が大事なのです。
教育委員会
市内全校への校務システム一斉整備!活きてくるスケールメリットとは?
市内全校への校務システム整備は、
市の教育ビジョンが基にありました。
教育委員会 指導主事の先生
行政として独自に描いた教育ビジョンを背景に、市内の小中学校の職員室情報インフラ環境整備を進めてきました。こうした整備で大事なのは、インフラ面で十分なセキュリティを担保した上で、校務システムを運用することです。ソフトの選定にあたっては、パソコンが得意な先生も、得意ではない先生も一緒に活用することが大事であると考え、操作のやさしい〈スズキ校務〉が最適であると判断しました。こうして、初年度には市内の約半分の学校が通知表作成まで手がけ、翌年にはその効果が学校間に広がり、すべての学校で実現することになりました。これは、先生方が互いに教え合いながら操作を習得していくOJTによって、先生の情報活用力が高まり、より早く浸透することになりました。
行政の立場としては、市内の学校に共通のしくみを提供し、学校内に散在している情報をひとつに集約することを目標に、これからも校務の情報化を推進していきます。
「校務の情報化」は学校運営上の判断を高める武器になる。
コーディネーター:玉川大学教職大学院・教授 堀田龍也 先生
今回の実践報告では、現場の先生と学校を運営する立場の校長先生に登場していただきました。
水野先生は、いわゆる「普通の先生」の代表であり、多忙感を日々感じている立場にあります。一方、新保校長先生は、そうした先生の多忙感を軽減できないかと苦慮しています。
水野先生の実践では、校務の情報化によって、多忙感は解消され心に余裕をもって子どもたちと触れ合えるようになっています。また、新保校長先生の学校では、出欠席の状況が詳しく早く完了するというように、明らかに効果が出ています。いずれも、学校向けに開発された校務専用ソフトを導入したことで、安心して確実に、また、セキュリティ面の安全も約束された中で運用が行われています。このように、校務処理は、全員の先生が普段から取り組む必要があるため、エキスパートの先生に頼らなくてもいい、ということが重要です。
「校務の情報化」とは、迅速に、正確に、そして十分な情報を手に入れ、学校運営上の判断を高めて武器にすることなのです。