授業実践リポート

Report

※記載の情報は掲載当時のものです。

 

総括パネル

伝えるチカラの育成
~相手意識と目的意識をおさえた授業デザイン~

【私が考える“伝えるチカラ”とは】

実際の場を多くつくり、
発信するおもしろさを体験する。
佐藤幸江先生の実践紹介
 (神奈川県横浜市立高田小学校)

 私は、「5年生総合/共生 つなげよう心 やってみよう自分ができること」の中で、子どもたちに他者と分かり合うことを学ばせました。子どもたちは、下書きを描いた後も、〈キューブ〉を活用しながら友たちどうしで“練り上げる”という作業を行っていきました。それによって、相手意識や目的意識を高め、たくさんの人に自分たちの活動を伝えたいという意識を持つようになったのです。
 相手意識や目的意識を持たせるためには、単元の構成を工夫し、実際に体験する場を設定することで関係性が見出され、それが手だてとなり、伝えたい思いがふくらんでいくことを感じました。

【私が考える“伝えるチカラ”とは】

メディアの特性を理解し、
選択・計画する力を備えていくこと。
石川等先生の実践紹介
 (国語と情報教育研究プロジェクト)

 私が紹介するのは、「映像と言葉(文字)のかかわり」について子どもたちに考えさせた二つの実践です。6年生の修学旅行の思い出をデジタル化するツールとして、動画編集ソフトを与え、写真にキャプションとBGMを付けて完成させました。子どもたちは、非常に熱心に取り組み、喜びを感じながら作業を進めていました。
 また、「1年間の思い出を漢字一文字で表現しよう」という課題では、説明段階からPCをフル活用。先例とはまた違う視点で文字と映像のかかわりについて考える機会となりました。いずれの授業も、メディアの特性を理解する、という押さえるべきポイントは同じなのであろうと感じました。

【私が考える“伝えるチカラ”とは】

思いを持って、伝えたいことを、
より本物らしく伝えること。
菊地寛先生の実践紹介
 (静岡県浜松市立豊岡小学校)

 6年生の修学旅行前に、校内自慢のガイドブックを作成して見てもらおうという学習を実施しました。相手は、校内の下級生や来校者。子どもたちは、完成したガイドブックを前に達成感を味わいました。しかし、伝えた相手からの評価を得てなく、伝わったかどうかは半信半疑でした。
 次に、修学旅行実施後に、新聞作成で修学旅行の様子を伝えようという学習を行いました。ここでは、相手として家族を設定し、何を伝えたいのかよく話し合いをさせました。そして、本物の新聞を見て、新聞のつくりを確認した上でグループ作業を行いました。完成した新聞を、保護者宛に手紙を書き評価をしてもらいました。自分たちの想いがしっかりと伝わったことが実感でき、満足感を得ていました。

コーディネーター
成瀬陽子先生(宮城県登米市立佐沼小学校)
 3人の先生方の実践の共通点は、まず、「思いをもつ」ことの大切さです。そのためには、「本物」に出会うこと、本当の教材や実体験など見たり触れたりすることで「思い」が育つことになるのでしょう。
 もう一つは、検討し合う場の設定と練り合う視点の明確化です。学習場面や作業場面においては、言語や文字と写真や映像などの関係性を理解させ、伝える視点を明確に表現させることも重要であることが分かりました。
 このように、相手意識や目的意識を明確にして、「伝えるチカラ」を育むような授業デザインを構築することが、これからの学習の中では、もっと求められてくると思います。

 

 

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