インタビュー&コラム

Column

金俊次 先生

校務の情報化ことはじめ 〈後編〉
「校務の情報化」の意義と準備

山形県米沢市立第四中学校 校長
金 俊次

(2010/10 掲載)

校務の情報化ことはじめ〈前編〉

 

校務の情報化は管理職が気合いを入れて

 前回のコラムにも書きましたが、本校が「校務の情報化」に取り組んだねらいは、「教職員の多忙感を解消することで本来の教育活動の充実を図る」、「学校にある個人情報のセキュリティを確保する」の2つです。これは学校経営の一環ですから、当然トップダウン。「校務の情報化」は管理職が経営のねらいを教職員にしっかり意味づけし、具体的な1年間のイメージを持ってもらうことが大切です。
 いつ頃どんな校務があるのか、その手間はどの程度かかるのか、丁寧に説明することで教職員が見通しをもつことができます。教務主任や担当者任せでなく、管理職は軌道にのるまで気合いを入れ先々にレールを敷いて行くことが、昨年の反省から学んだ最大のポイントです。

 

本校の校務の情報化はこんな感じ

 1学期からの校務支援システムの活用を追ってみます。
 4月の第1週目の学年の名簿作成。1年生は例年通り入力ミスに注意しつつ基本データを作成。2年生は学級編成のデータを活用して、あっという間に基本データができあがり。3年生は2年生からクラス替えがないのでそのまま更新です。
 入学式前日まで、下足箱、ロッカーなどに貼る生徒氏名のシールづくりの作業が例年あります。従来は学年の担任外の教職員が生徒氏名印を使って166名分3セットを制作していましたが、今年は名前のタックシールにプリントアウトで終了、教育委員会提出の生徒名票、学級で使う名票等々、印刷パターンに入れてプリントアウトで済んでしまいました。
 生徒の顔写真の入った生徒名簿を毎年作っていますが、これも校務支援システムの機能として付いています。簡単に名簿ができるだけでなく、名簿が
印刷されるまでの間、生徒の顔と名前を覚えるためのツールとして、活用している光景がよく見られました。
 5月、中間テストの素点入力。入力の方法を学習するためにミニ研修会を実施し、校務支援システムのイメージづくりも含めて研修しました。テストの集計結果はそれぞれの担当者の必要に応じてプリントアウト、生徒への個人成績表も校務担当者が印刷し担任に配布、素点入力から生徒へ配布までの作業時間の短縮が図られました。また、中間テストの平均、素点の分布、生徒個別の点数まで、リアルタイムで私自身が生徒の情報収集ができ、管理職としてとても便利に感じました。
 7月は期末テスト、評定交換、成績表作成と校務支援システムが大活躍する月です。一連の作業の研修は必要な教職員に、各学年の校務支援システム担当者から個別の指導をしてもらいました。2年目なので、この一連の作業のイメージもっている教職員が多いためスムーズに進みました。導入初年度は研修だけではなかなか理解できず、校務効率化とはほど遠い状態でした。導入初年度、この7月をスムーズにこえる準備と手だての綿密さが成功の鍵となります。

 

研修会はミニミニで

 校務支援システム初年度、操作、活用の研修会を5月に1学期分の内容を1時間で実施しましたが、失敗でした。今年度は、ミニミニ研修会で必要な操作を必要な時期に最小眼の時間で実施しました。どの学校もそうでしょうが、全教職員を集めての研修会はなかなか時間がとれません。そこで、必要な時に必要な操作情報を提供するミニ研修会は効率性が高く、理解も早く、学習の定着もアップしました。また、各学年の校務支援システム担当者は作業を円滑にまわすためには欠くことができない存在となっています。

 

本質を大切に

 昨年度、通知表の担任所見は全て手書きで記載していました。今年度、教職員からPCでテキスト入力をしたいという希望が出ました。所見は手書きで書くべきだという反対の意見も多くありました。結論は「どちらでもよい」としました。校務の情報化のねらいの第一は、教職員の多忙感の解消です。得意な方法で記入することこそが効率化につながると考えたからです。そして、所見は保護者と生徒そして担任を結ぶ大切なコミュニケーションツールなので、記入内容を今まで以上に吟味することを条件として付けました。また、通知表が差し込み式のクリアーファイルになりました。この機に生徒の1年間の成長がこのファイルにポートフォリオ的に残るような活用を教職員、保護者にお願いしています。
 校務支援システムを活用する時、本質を忘れて規制をかけることはしないように配慮することが大切です。

 

運用ルールこれだけ

 校務支援システムにアクセスすると、長期欠席者の出欠状況、元気にあいさつしてくれた生徒の家庭状況や成績、はたまた各教科の評定の度数分布や定期テストの平均点、学校の個人情報のほとんどがここにあり、セキュリティの高さを学校として問われます。本校での運用ルールは、(1)校務支援システムのログインID、パスワードの個人管理の徹底 (2)校務支援システムにログインしたまま席を離れない (3)校務支援システムにある個人データを校務PCに保存しない、持ち帰らない の3つだけです。様々な個人データが一括管理されており、そこにアクセスしてはじめてデータを活用することができます。さらに、自分のPCにデータを保存しなくても作業ができますし、そこでしか作業ができませんから、情報漏えいなど深刻な事態が起きる可能性は極端に低くなったと考えています。

 

まだまだこれから

 生徒の成績情報、健康情報、家庭情報がリアルタイムで入手することができる校務支援システムは、管理職として、日々の学校の状況を掴むためのツールとなっています。従来これだけの情報を得るためにかなりの時間と労力を割いていました。全教職員が児童生徒の情報を共有し、必要な情報を把握、指導に役立てる。そんな、生徒理解の共有プラットホームになってこそ、学校に大きな変革をもたらすツールだと思います。校務支援システムの活用はまだまだこれから、次のステップへとレールを敷きながら実践を深めたいと考えています。

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