授業実践リポート ICT活用&情報教育

鹿児島県 志布志市立田之浦小学校

1人1台環境でのタブレットPC活用に取り組む

2018/03掲載
※記載の情報は取材当時のものです。

 志布志市立田之浦小学校は、全校児童5名の市内で最も小さな学校である。志布志市のモデル校の1つとして、児童に1人1台タブレットPCが整備されている。授業では日常的にICTを活用する雰囲気が浸透しており、先生方はタブレットPCを効果的に活用することで児童の学力向上を目指している。一体どのような活用をされているのか。日々の授業の様子を紹介する。

学習活動を効率化するためのタブレットPC活用

 タブレットPCは実に様々な使い方ができる。教育用コンテンツを入れて学習することもできれば、カメラの様に使うこともできる。具体的に、授業のどのような場面で使われているのだろうか。

主要教科でデジタル教科書を使用

 田之浦小学校にはデジタル教科書が導入されている。タブレットPCから映像資料の呼び出しや音声の再生が手軽にできるため、分かりやすい提示をすることができる。

生活科や体育で写真・動画撮影

 タブレットPCのカメラ機能を利用して、体育での運動の様子を撮影し振り返って修正点を見つけたり、育てている植物や身の回りの自然を撮影し観察記録をつけたりしている。

プレゼンテーションの作成

 道徳や総合的な学習の時間では教育用統合ソフト<キューブきっず>を使い、プレゼンテーション作成に力を入れている。自分の考えをまとめることを通して、自己表現の力を伸ばすねらいがある。

課題解決のためのタブレットPC活用

作成したスライド資料を相手校の大型テレビにも映して発表。タブレットPCはお互いの学校を映すビデオカメラの役割を果たす

 小規模校ならではの課題も、タブレットPCをうまく活用することで効果的に解決している。

複式学級での指導も効率的に

 田之浦小学校は完全複式学級である。担任の先生が一方の学年の児童の授業をしている間は、もう一方の学年の児童は自習をする必要がある。タブレットPCの導入により、この自習の時間にドリルソフトで学習できるようになった。児童のレベルに合わせた問題に次々と取り組むことができるため、効率的な学習ができるという。

相手意識を育む授業も

 児童が少ないため、自分以外の児童の多様な意見に触れたり、質問を受けたりする機会が少なくなりがちだ。そこで、同じような課題を持つ小規模校同士をテレビ会議システムで繋ぎ、意見を交流する授業を行うようにした。5年生の総合的な学習の時間に行うプレゼンテーションの授業では、画面の向こうにいる相手校の児童にわかりやすいよう、スライド資料に書いていないことも補足しながら話すなど、「相手意識」を育む指導を行っている。将来的には、質問を受けたときに自分の体験や知識を交えて返答するといった積極的な自己表現ができるレベルを目指すという。

高い水準の学びを実現したい

校長 中尾 裕二 先生

 田之浦小学校では、校区外からでも通学することができる「特任校制度」をとっている。校長の中尾裕二先生は「児童の数が少ないため、先生方の注意が届きやすい環境の中で、先生や友達とじっくりと関わりながら学校生活が送れる環境です。『自分をもっと表現できるようになりたい』という児童が転校してくることもあります」と語る。
 また中尾校長は、教育にかける思いを次のように話す。「子どもたちの学力を向上させたいということは、私たち教員の根本的な願いです。小規模校だからこそのきめ細やかな指導の成果というだけでなく、高い水準での教育をしていると胸を張って言えるよう努力をしています」。そこでポイントとなるのが平成28年9月から導入された児童に1人1台のタブレットPCの活用だという。

「環境を整えること」「活用の展望をもつこと」が大切

教頭 西 康隆 先生

 田之浦小学校のICT活用を中心となって進めているのが、教頭の西康隆先生だ。タブレットPCをはじめ、校内でのICT活用度を高めるためにどのような取り組みをされているのか。ポイントを伺った。

授業をする傍らに大型テレビがある

Point 1

使いたいときに使えるようにしておく

 ICTを使いたいときにすぐ使えるようにしておくのが活用への第一歩と考えました。教室内に大型テレビ(前後に1台ずつ)をはじめ、実物投影機、ノートPCを常設するようにしました。足りない機器があればパソコン教室から持ってくる等柔軟に対応し、環境を整えていきました。

Point 2

研修で活用の展望をもつ

 ICT活用に関する校内研修を月に一回行っています。研修の時間には、これまでの実践について簡単に振り返った上で、他の先生方に相談したいことを挙げ、情報を共有したり助言をし合ったりしています。また、今後どのようにICTを使っていきたいか具体的な期日を設けて展望をもつようにし、確実に次の実践に繋げるようにしています。

校内研修ではワークシートを使用。「現在活用していること」「質問やみんなで考えたいこと」「実践したいこと」の3つを記入し、話し合う

無理なく続けることが結果に繋がる

 普段から積極的にICTを活用する雰囲気をつくっているが、同時に「難しいと感じたことは次回以降の授業でチャレンジする」等、無理をしないことも大切にしているという。できる活用からチャレンジしていくことにより、最初はICTを使うことに抵抗があった先生も徐々に慣れ、今では率先して授業にICTを取り入れるまでになったそうだ。授業でのICT活用が浸透し効率的な学習や課題の解決ができるようになったためか、これまで以上に意欲的に学習に取り組む姿が見られた。結果としてテストの点が上がる等、明らかに学力が向上した児童もいるという。無理のない範囲でコツコツと続けていくこともまた、成果に繋がっているようだ。

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