今回、見事グランプリを受賞されたのは、岡崎市立六ツ美北部小学校4年3組・担任の杉山康子先生と37名の子どもたち。杉山先生は、第17回キューブ活用コンテストでも、グランプリを受賞されており、今回で2回目の受賞となる。
受賞作品は学校の校区を流れる占部用水の歴史をまとめたデジタル絵本作品「占部用水作りの苦労」だ。杉山先生は「本校には異動してきたばかり。私も知らないことだらけでしたが、それがかえって新鮮で、子どもたちと一緒に学んでいくことに繋がりました」と振り返る。受賞された作品や授業、〈キューブきっず〉の活用について、お話を伺った。
まずはグランプリ作品をチェック!
「占部用水づくりの苦労」は、絵と音声を「キューブプロジェクタ」で編集して作成されたデジタル絵本である。江戸時代初期の占部用水づくりの苦労から、現在の利用に至るまで、その発展を追う内容となっている。実際に調べたり見学したりして学習したことが絵や吹き込まれたナレーションに活かされており、具体的でわかりやすい。
作品の一部をご紹介
江戸時代のはじめ、洪水や日照りの害で苦しんでいた農民たちのために何かできないかと、野本新十郎と渡辺弥蔵は用水をつくることを考えました。
地域の農民から大反対に合うも、問題を解決する様々な方法を考え、私財をなげうってまで、工事をすすめます。
当時は機械もないため人の力に頼るしかなく、5年間もかけて8kmの用水を完成させました。しかし、2人の最期は家族と離れ、哀れなものだったといいます。
今でも、用水の水は六ツ美地区の田畑で使われています。上に道路が作られることも多くなった現在の用水は六ツ美北部小学校東側の道路の下にも流れています。用水が流れていることは分水口があることでわかります。
占部用水は江戸時代から現在まで、多くの人々によって引き継がれ、人々の暮らしを豊かにするために利用されてきたのです。
「クラスで一つのものを作りあげる喜びを味わいたい」デジタル絵本で学習のまとめ
六ツ美北部小学校では、4年生の社会での郷土に関する学習として、占部用水を扱っている。江戸時代初期に作られた占部用水は、時代とともに工事が重ねられ、そのほとんどが暗渠化した現在でも学校のある六ツ美地区に水を供給している。
杉山先生は社会の学習に加え、総合的な学習の時間で、調べたことや見学したことのまとめとしてデジタル絵本づくりに取り組んだ。「クラスで一つのものを作り上げる喜びを何かで味わえたらいいなと思っていました」と杉山先生。そこで思い浮かんだのが、デジタル絵本だった。
調べ学習と見学で子どもたちの興味・関心を高め、ICTで成果物としてまとめる
作られた当時の占部用水の全長は8Km。実際に用水沿いに歩くことで、当時の手作業での掘削工事がどれほど大変だったか、感じることができた
町中の何気ないところに、占部用水の痕跡がみてとれた
社会の授業は、占部用水に関する資料を各自で調べ、その歴史や変遷を知ることから始めたという。杉山先生は子どもたちの充実した調べ学習のために、学校に保管されている郷土読本を準備したり、他の学校にある資料を借りたり、市役所にある最新の資料を提供してもらったりと、様々な資料を集めた。授業の中で、古い資料と最新の資料を見比べ、工事で改修された地点を確認するなど、変化を具体的に学んでいった。
普段の生活では、占部用水の存在はあまり意識されておらず、自分たちの町に用水が流れていること自体気づいていない子どもたちもいたそうだ。そこで杉山先生が重視したのが、見学である。資料や地図で用水の歴史を学習した後、実際に占部用水沿いを歩き、現在の姿を確認した。資料で語られていることだけでは十分わからなかったことも、実物を見ることで実感することができ、子どもたちの興味・関心を高めることに繋がったという。
調べ学習と見学で子どもたちの理解が深まったところで、総合的な学習の時間を使い、デジタル絵本作りに取り組んだ。占部用水の歴史をまとめた子どもたちのノートから言葉を拾うなどして、クラスで協力してシナリオをつくり上げた。一人に一つ、シナリオからセリフが振り分けられ、それを説明する絵を描いた。子どもたちの声でセリフも録音し、最後には「キューブプロジェクタ」で編集し、デジタル絵本にまとめた。出来上がった作品は教室で上映。「子どもたちは、自分たちの絵にナレーションがつき、ひとつの物語が完成したことに驚いていました」と杉山先生は上映会を振り返る。
完成した作品データは、次に4年生になる子どもたちも見られるようにと、学校内の共通サーバーに置いている。
低学年であればあるほど「手書き」を
~子どもたちの実状に合わせて指導内容を工夫する~
他にも、国語の単元で〈キューブきっず〉のグラフ作成機能を使ってグラフを作成するなど、PCに「慣れる」授業を行っている
杉山先生はICTを使った授業をする際、低学年であればあるほど「手書き」の部分を残しているという。「今回は4年生の指導でしたが、あまりPCに慣れていない子どもたちだったので、まず『慣れる』ことを目指しました」と杉山先生。デジタル絵本に使う絵は「手書き」し、PCでスキャン。子どもたちがPC上で行う作業は「キューブペイント」のべた塗り機能での色付けのみというシンプルなものにした。子どもたちの実状に合わせて、指導内容も工夫している。
視覚と聴覚で訴えると、子どもたちの納得の仕方が違う
六ツ美北部小学校で情報担当も務められている杉山先生。「普段の授業で、指導用にICTを使うときには『視覚と聴覚』で訴えることを重視しています」と語る。「教科書の写真だけでは伝わらないことも、大型テレビで映像を流すだけで、子どもたちが受け取る印象は全く違います。岡崎市は石が有名で、御影石を加工しているところを映像で見せると、子どもたちは『大きな音がするね』『物が飛び散って大変』と様々なことに気づきます。すると、『とても住宅街ではできない』『だから広い土地に移転したんだ』とさらにもう一歩先の気づきを得ることができます。子どもたちの納得の仕方が違います」。
見学に行くことができない場所についても、ICT活用でうまくカバーすることで、効果的な学習が期待できるという。
校長 澤田 祥明 先生
岡崎市立六ツ美北部小学校 「ひとくちメモ」
六ツ美北部小学校の校門を入ると、大きな石碑に「むつみあう」という言葉が刻まれている。六ツ美北部小学校では、この言葉を大切にしている。学校がある地区の名称である「六ツ美」とかけて、「皆で相手のことを思い合って、仲良く過ごしましょう」という意味が込められている。部活動も盛んで、多くの部活が、市内の大会で優秀な成績を残している。「子どもたちはとてもチームワークがよく、チームでお互いに励まし合いながら取り組む様子が見られます」と澤田校長。子どもたちの「むつみあう」姿勢が結果に繋がっている。
グランプリ受賞 杉山康子先生に聞く!
キューブ活用のポイント!
杉山 康子 先生
ICT活用の第一歩は、ひな型の配布だと思っています。ひな型の配布の良いところは、子どもたちが目的を絞って取り組めるところです。白紙だと、どうしても色を使ったり、絵を入れたり、レイアウトを考えたりすることに多くの時間を割いてしまいます。レイアウトの決まったひな型から始めれば、授業の目的から逸れることなく、授業時間内に目標を達成できるようになります。〈キューブきっず〉には様々な「テンプレート」が入っているので、それをそのまま利用することもありますし、そこから自作でひな型を作成することもあります。初めから大きな課題に挑戦するのではなく、すぐにできることから始めていくのが成功の秘訣です。
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〈キューブきっず〉では様々なアプリケーションに「テンプレート」が用意されている。