新居町立新居小学校(現湖西市立新居小学校)
担任の先生から、2学期の「通信票」を受け取る子どもたち。不安気な表情の児童も、先生との会話で次第に、にこやかな表情になっていく。
〈スズキ校務シリーズ〉メニュー画面
「通知表レイアウト」画面
終業式の日に訪ねて
静岡県新居町(※取材時の町名。平成22年3月23日に湖西市と合併し、現在は新「湖西市」となっている。)は、江戸時代の東海道の関所のひとつ「新居関所」(国指定史跡)を有する町。町には、農漁業や工業、商業、水産業、観光産業などがバランス良く整い、活気にも溢れている。
平成21年12月。新居小学校では、2学期の終業式が行われていた。午前中で終わりとなるこの日、教室では通信票が子どもたちに渡された。
その通信票の形態はA4サイズ用紙に印刷され、それがクリアファイルに入れられている形となっている。子どもたちは、それをいつもの通信票として当然のように受け取っていた。
新居小学校の通信票は、昨年度(平成21年度)から校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の『通知表レイアウト』によって作成されている。もっとも、その前年度も、いわゆる手書きによる通信票だったわけではなく、2年間に渡り、汎用の表計算ソフトによって作成された通信票がつくられ、“校務の情報化”のあるべき姿への検討、模索がはじまっていたのである。
新居小学校の通知表レイアウト
情報主任 小池秀明 教諭
〈スズキ校務シリーズ〉の導入・実務
情報主任の小池秀明教諭によれば、「通信票に関しては、すでに他校で運用されていた個人(先生)手作りの汎用表計算ソフトの通信票システムを改良して本校に合わせる書式に整えて活用していました。それを2年間続ける中、どうしてもレイアウトが思い通りにならない部分があったり、新たな修正を加えようとすると専門性が必要だったり、膨大な作業時間が必要になったりというように、妥協点を探しながら対応していました。」とのこと。
各学校の特性や学年ごとの細かな書式に適したスタイルに仕上げるのには、少々困難を伴い、また、システム自体の運用管理者の異動や、サポートに対する不安の面もつきまとっていたようである。
一方、通信票以外では、成績処理は以前より成績処理ソフト〈竹千代〉で行われていた他、学校保健総合管理ソフト〈えがお3〉や、連絡メールシステム〈キュート連絡網2〉も導入されているなど各役割に応じたソフトウェアが配備され、校務の情報化の下地はあった。そして、平成21年度から、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉を導入し、学校全体で情報の共有を図り、トータルな校務の情報化を進展させることになったのである。
「パソコンでの通信票出力に関しては、汎用表計算ソフトでの運用段階を通じて、職員や保護者には浸透していました。ですから、通信票の印刷をより効率・効果的な運用を行うことのできる校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉通知表作成に切り替えるだけで良かったのです。さらに、同時に〈スズキ校務〉の『名簿情報管理』と『出欠席情報管理』、『小学校成績処理』を加えてスタートすることで、日常的に入力していったデータを、各種帳票や統計出力、さらには『通信票』に反映させることができる、というメリットも大きく、さらに、学校全体で情報の“共有”ができ、1度入力したデータはさまざまな作業で再利用できます。本校における校務の情報化は飛躍的に発展したと言えると思います。」と小池教諭は振り返る。
“校務の情報化”は、単に情報をデジタル化して処理するだけではなく、様々なスケールメリットを活かせる環境へシフトしていくことも意味しているのである。
校長室の壁に貼られた写真付き名簿。
スズキ校務シリーズ〈名簿情報管理〉では、さまざまな形で名簿を出力することができる。
スズキの「名簿連携システム」では、学習用、校務用ソフトに関わらず、対応ソフト間でも名簿データを校内ネットワーク上で一元化して共有管理ができる。一度入力した名簿データはさまざまな場面で再利用可能。
職員室では先生方が〈スズキ校務〉を操作し、日々の出欠席情報の入力や、成績処理、各種帳票の印刷を行う。
保健室では養護の先生が学校保健総合管理「えがお3」を操作する。
各ソフト間の「名簿連携システム」により、〈スズキ校務シリーズ〉と校内で名簿情報が一元化、共有化されて効率アップしている。
名簿の一元化と共有化メリット
〈スズキ校務シリーズ〉導入によるメリットを最大化させる鍵は、取り扱う「学習指導情報」の核となる名簿作成の一元化と共有化である。
『名簿情報管理』には、あらかじめ利用度の高い各種の名簿(小学校/26種)が用意されている他、さまざまな都合に合わせて変更したり、新たにオリジナルレイアウトの名簿を編集したりすることができるため、慌ただしい新年度においても、短期間で幅広い名簿活用が可能となる。実際に新居小学校では、「写真登録・編集ナビ」を活用して児童の個人写真を登録した名簿が、校長室に貼られていた。
また、サーバーに一元化された名簿などの情報は、〈スズキ校務シリーズ〉の他のソフトでも活用できる他、教育用統合ソフト〈キューブきっず3〉や連絡メールシステム〈キュート連絡網2〉、学校保健総合管理ソフト〈えがお3〉などとの名簿情報の共有も実現するのである。
この点でも、新居小学校は、保健室や連絡メールなどとの連携を図りながら情報を有効活用していた。また、小池教諭によれば、「全校児童が1,000名を超える本校では、年度当初の名簿作成業務に毎年多くの時間を費やしていました。今回の導入によって、確実にその手間が軽減されましたね。また、並べ替えなどの自由度も高く、さまざまな名簿活用が実現しています。」と、『名簿情報管理』の恩恵を実感していた。さらに、「これは成績処理や通信票作成とも関連しますが、担任ではなく教科を教えている先生にとっては、写真付きの名簿は、うれしいでしょうね。『この子は、よく授業中に発表している子だ』というようなことを写真付き名簿によって瞬時に思い起こすことになるからです。」と、名簿情報の共有化メリットの一端を教えてくれた。
新年度の校務軽減を実感
平成21年度の通信票を作成するにあたっては、前年までのレイアウトを見習う形で『通知表レイアウト作成』によって書式がつくられた。見本となるものを早い段階で小池教諭が作成し、表紙デザインまでを考えた後、各先生方の意見や提案などを受けて最終的な形に仕上げていった。
「前年度と比べて、修了証の部分が大きく変わりました。印鑑を押す位置などが新しくなり、新鮮なものになりましたが、中身に関しては概ね前年度までのレイアウトと似ているものとなりました。」と小池教諭は作成時の経過を振り返る。
経過を整理すると、まず小池教諭が『通知表レイアウト作成』上で見本を作成。5月には校内で全体研修会を開催。その後、各学年毎の調整を図り各学年の情報担当と小池先生が最終調整を進めた。「一度にすべてのことを先生方に伝えるのは難しいので、少しずつ段階的に進めていきました。細かなステップで理解促進を目指していくことが大切なのだと思います。」と、小池教諭は計画的な体制づくりを強調していた。
こうした経過を辿り、新居小学校では、1学期の段階から『成績処理』で実務を進め、1学期の終わりの段階ではすでに『通知表レイアウト作成』による通信票を全児童に発行している。小池教諭は、「これまでの2年間の校務処理の下地があったからこそ。」と謙遜するが、リード役の小池教諭の功績と各先生方の積極的な取り組み、そして学校全体としての一体感による成果であることに間違いない。また、「校長先生の理解も大切。」というように、小池教諭が抱いていた〝もっと、こんなカタチにしたい〟というイメージに対して、子どもと接する時間を大切にしたいという願いを感じ取った鈴木成典校長の理解とバックアップの姿勢も見逃すことはできない。
6年3組で通信票を受け取る子どもたちには、一喜一憂の表情が浮かぶ。担任の先生は、ひとりひとりに対して十分な時間を割いて、丁寧に解説やアドバイスを行いながら通信票を手渡していた。「今回の通信票は、先生ひとりひとりが自分の手で作り上げたことを実感していると思います。」と小池教諭が言うとおり、愛情を込めて付けられた成績が並ぶ通信票を、先生が児童に渡す場面には、そんな想いが込められている印象を受けた。
校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉による校務の情報化によって獲得できた時間が、先生にとって子どもたちと過ごすための時間へとつながっていく日が、それほど遠くない時期に訪れるような気配を感じた。
情報主任を信頼して校務の情報化のための体制づくりを支援。
鈴木 成典 校長
パソコンを活用した通信票の作成は、前任校(中学校)でもすでに実施されていましたので、私としては、情報主任の小池教諭を信頼して進めてもらいました。
校務の情報化によって望まれることは、子どもたちと向き合い触れ合う時間を確保することにあると感じています。実際にその効果が顕著になるのは、もう少し先のことになるのかもしれません。
成績処理や通信票作成をパソコンで処理する場合、懸念されることのひとつは、「成績の変化が見えにくくなるのではないか。」という点です。しかし、担任の先生と教科担当の先生がお互いにアドバイスし合うことで注意点もはっきりし、また、データを成績に反映させる際において、先生の本当の役割がより明確になると思っています。
時代は確実に校務処理の効率化・情報化に向かっています。それをいち早く実感できる体制作りを今後も推進していきます。
“トータルな情報化”にシフトすることで、「校務の情報化」のメリットが活き、先生本来の姿を取り戻すきっかけになる。
情報主任 小池 秀明 教諭
本校では、今回の校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の導入によって、校務の情報化に向けた体制が一本化されました。それは、名簿情報から、出欠席情報管理、成績処理、通信票といった教職員が普段の仕事の中で携わる情報処理に関して、全員が共通して専用のシステムで運用できる体制ができたということです。
しかも、〈えがお3〉や〈キュート連絡網2〉といったソフトとも「名簿連携システム」で結ぶことによって、基本情報の一元化と共有化を実現し、学校全体の校務の情報化が一層促進されたことになります。
それまでの状況は、いわば「部分の情報化」であり、個人の作業、個々の処理によって効率化を図ることができた段階であったと思います。
しかし、今回の〈スズキ校務シリーズ〉によって、例えば「名簿」など扱う情報の“共有”と“再利用”ができることにより、職員室だけでなく、保健室も含め学校全体でのスケールメリットが生かされ“校務の情報化”のメリットを全員が感じて携わることができるようになったと感じています。
〈スズキ校務シリーズ〉による校務の情報化によって、特に学期末などの時間の確保に段々と余裕が出てきていることも実感できます。放課後を活用すれば、無理なく十分に通信票を作成できます。そして、脱字や誤記などの単純ミスも大きく減りました。『便利になった』と、多くの先生が実感しています。
先生が自分の時間を確保し、子どもたちと接する時間をつくることは、先生本来の姿に戻ることになるだろうと確信しています。
時代は確実に校務処理の効率化・情報化に向かっています。それをいち早く実感できる体制作りを今後も推進していきます。
データの共有で大きなメリット。
学校保健総合管理ソフト〈えがお3〉の機能と連携した保健活動。
鈴木 智香子 養護教諭
本校には、1,000人を超える児童が通っているため、新年度4月から身体検査がはじまります。毎年、その時点では、新しい名簿が必要となっていたため、以前は短期間で名簿を作成する業務に追われていました。
しかし、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉が導入されたことによって、名簿づくりもスピーディーになりました。すでに導入されていた学校保健総合管理ソフト〈えがお3〉との名簿共有にはじまり、身体検査から集計、お便りの発行まで迅速に行うことができるようになりました。
また、〈スズキ校務シリーズ〉は、名簿を活用するだけでなく、出欠席情報管理も役立てています。これは、保健日誌の補助的な役割として、学校長に報告する際に大変便利です。
〈えがお3〉は、長年活用していることもあり、その特性を十分に理解しているわけですが、特に活用の度合いが高いのは「健康相談活動」の入力です。ちょっとしたことでも書き留めておくと、後々利用できる他、一覧表なども曖昧なことを明確にさせる点で説得力のある保健活動を進める一助になっています。