授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

北海道 札幌市立平岡中学校

札幌市立平岡中学校

〈情報〉以外の内容であっても

広く〈情報〉を意識した

中学校 技術・家庭科の学習

 

2年生 技術・家庭科
〈キューブNextシリーズ〉活用事例 

2009/08掲載

 

日常生活と直結する「技術・家庭科」

札幌市立平岡中学校
札幌市立平岡中学校

 

 中学校の教科の中で、「技術・家庭科」の役割は、大きく変化している。戦後世の中が安定し高度成長期だった昭和の時代においては、生産技術者として即戦力の社会人を育成するための職業教育として、その役割を担っていた。しかし、今日の「技術・家庭科」では、生活に必要な知識や技術を習得することに力点が置かれている。その変化は教科書を眺めるだけで容易に推測できる。

 今回訪問した札幌市立平岡中学校での授業も、『機器のしくみと保守点検』の「電気を安全に使う方法を調べよう」という内容の学習であった。「技術・家庭科」の授業を受け持つ尾崎廉先生によれば、「災害現場にボランティアで出向いた学生たちが、釘を打つ方法さえ知らないのでは、社会の役に立つこともできないですからね。」と、現実の場面で求められる実践力を習得することが「技術・家庭科」に求められている生活の技術ではないかと明言する。

 

電気利用の学習を通して、表現し伝えることを学ぶ

授業風景
生徒にアドバイスする尾崎先生

授業風景

 2年2組のこの日の授業は、先のテーマについて学習したことをA4サイズ1枚のレポートにまとめる学習であった。興味深いのは、『使用するアプリケーションは各自の自由』となっている点である。つまり、これまでの「技術・家庭科」の授業で使用してきたアプリケーションソフトウエアを適切に選択し使いこなせるか、ということも大切な要素となっているのである。

 生徒のレポートは、すでに終盤に差しかかり、仕上げに近い段階に来ていた。尾崎先生は、ここで生徒たちに注意を促す。「参考にしたホームページなどがある場合は、それを明記する必要がある。どんな書き方が良いだろうか?」と生徒に問いかける。

 そして、著作権の及ぼす範囲などに言及していく。中学2年の段階で著作権を意識させることは、とても重要であるという認識だ。

 生徒からは、「ホームページのアドレスを記載した方がいい」などの考えが発表され、「『出典』『引用』などの明記とともに、いつ作成され、どこに掲載されていたものか明らかにする必要がある。」と尾崎先生から説明が行われた。

授業風景

 

 

キューブNextを使用する生徒たち

授業風景
「電気」についてレポートをまとめる学習

授業風景
キューブペイントでイラストを描く生徒

授業風景

 

 教室内を見渡すと、〈キューブNext〉を使用している生徒も随分いる。その生徒に質問してみると「キューブは使いやすいから」「キューブはカンタン」「タイトルを自分の好みで色々に工夫できるから楽しい」「ペイントで『コンセント』を描いて貼り付けました。いろいろなソフトが付いているのでアイデア次第でいろんなことができる」などの答えが返ってきた。

 レポートをまとめる、という単調に思える学習も、使用するアプリケーションの選び方や生徒各自の工夫で創作性が発揮されることに気付く。また、授業に意欲的に向かう生徒の姿勢を見て、あらためてアプリケーションの重要性を再認識した。

 さて、授業の途中で尾崎先生は、「このレポートは、自分たちが調べた内容を他の人も使うことができる資料にすることが目的です。難しい言葉や表現をそのまま書き写しをするのではなく、意味や理由が説明できるよう、複数の情報を比較し調べることも必要じゃないかな。」と、単にネット上の資料を書き写して終わらないように生徒たちに注意を促した。

 レポートは、未完のまま授業は終了したが、時間内の提出を最優先しないことで、生徒たちのレポートは、より内容の濃いものに仕上がるのではないだろうかと期待される。

 

あらゆる場面で情報活用の実践力を育てる

授業風景
プレゼン発表について生徒とともに振り返る

 

 「『情報とコンピュータ』以外の『ものづくり』や『エネルギー変換』といった学習にはコンピュータを利用する必要がないと考えるべきではなく、学習に必要な場面で手段として適切に活用すること、情報教育の内容を技術・家庭科全体にちりばめ必要な力を育てることが必要だと考えています。」と話す尾崎先生。今回の授業も、リテラシー(アプリケーション活用)、情報モラル(著作権)を『電気』の学習に組み込んだスタイルの授業であった。

 さらに「姿形が見えにくい“情報活用の実践力”は、学習内容が生活に直結している『技術・家庭科』で身につけやすいと考えています。本来は,全ての教科を通してこの力を育てることが情報教育の目標とされていますが、学習内容と関連づけがうまく出来ているとはいえないのかも知れません。その点、中学校の『技術・家庭科』は、内容を工夫することでこの力を育てる場面を沢山作ることができるのです。」と、尾崎先生は、常にこれからの社会に不可欠な「情報教育」を意識して授業に臨んでいる。

 

これからの学習で発揮される技術力を養う

尾崎先生
尾崎廉先生

 

 この日は、6時間目の2年選択の授業も見学することができた。ここでは、『自分で考えてコンピュータを使った作品を作ってみよう』という学習のプレゼン発表が行われた。生徒たちが使用するアプリケーションは、〈キューブNext〉をはじめとするキューブシリーズ。「キューブプロジェクタ」で物語を作ったり、「キューブページ」でホームページを仕上げるなどの他、「ロボチャート」でプログラミング(計測と制御の学習)にチャレンジする生徒もあり、ひとりひとりの熱心な取り組みが作品にあらわれていた。

 「普段はアプリケーションの使い方は特に教えていません。ヒントやアドバイスを通じて生徒たちの実践力を育てることで、本当の意味で、これからの学習や日常生活における活用能力として発揮されるのではないでしょうか。」と話す尾崎先生の言葉が印象的であった。

 

 

 

 

 

 

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