授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

東京都 葛飾区立中之台小学校 

葛飾区立中之台小学校

〈あんしん・あんぜん情報モラル〉

を活用し、携帯電話の利用をテーマに、

保護者と子どもたちの意識を深めた

『道徳』の授業参観。

 

6年生 道徳
〈あんしん・あんぜん情報モラル〉活用事例 

2008/08掲載

 

人情あふれる街の中之台小学校

JR亀有駅
JR亀有駅。駅北口を出ると、テレビアニメでもおなじみの「こち亀・両さん」の銅像が出迎えてくれる。

葛飾区立中之台小学校
葛飾区立中之台小学校

 

 東京都葛飾区は、東京23区の最東北部に位置し、江戸川を挟んだ東側は千葉県松戸市に、そして北側は埼玉県三郷市に隣接している。
 「葛飾」という名称は、広く全国に知られ、人情深い東京の下町というイメージが浸透している。今回訪問した中之台小学校は、そうした下町の風情が残るJR亀有駅から徒歩で数分のところにある。駅前の商店街から少し奥に入るだけで、街の表情は一変し静かな住宅街が広がり、その一角に中之台小学校はあった。
 訪問した当日は日曜参観の日であり、その中には、これから野球の試合を控えた保護者や地域の方々がユニフォーム姿で参観される姿なども見受けられ、地域と学校との結び付きの深さの一端を見る思いがした。

 

日曜授業参観と道徳地区公開講座

授業参観の案内
6年1組の学級通信 <授業参観の案内>

 中之台小学校が開設されたのは、昭和26年。今日まで60年近くの歴史を重ねている。
 これまでに葛飾区の研究奨励校として、理科や国語、算数、英語などの分野で成果を発表するなど、同校が教科研究に積極的な様子がうかがえる。
 この日の授業参観は、「道徳地区公開講座」の側面を持ち、1~2時間目の授業に続き、3時間目の授業は、1年から6年まで「道徳」が扱われた。そして、4時間目は、保護者を対象に『学校と家庭で進める子どもの心の教育』という演題で講演会が開催されている。

道徳の教科書と副読本

 

教材探しで効果的な「情報モラル」の授業を実現

桝田佳江先生

 

 

 6年1組の担任である桝田佳江先生は、同校及び同区の情報教育推進リーダーである。したがって、「情報モラル」の取扱に関しても重要な役割を担う立場にある。

 「このクラスは、昨年、総合的な学習の時間等で情報教育の内容も扱い、コンピュータリテラシーの学習を行いつつ、インターネットを活用した調べ学習の場面等で、ネチケットなどについても日頃から細かく指導しています。しかし、情報モラルに関しては、何度も繰り返し、しっかりと身につけさせる必要を感じます。」と桝田先生は子どもたちの様子を分析する。

 今回、「道徳」の授業の中で「情報モラル」の学習内容を含めて取り上げたことは、大変意欲的であると感じられる。授業は『ケータイ持ってなきゃ、友達じゃない!?』というテーマである。桝田先生は「友達との関わり」、「コミュニケーションの方法」、「社会的なきまり」という道徳的な内容に、「情報モラル」の内容を加えての授業を構想した。

 「『道徳』は、自己を振り返ったり、自分を見つめ直すことを教える機会です。社会とのつながりやそこに至るまでの自己責任なども教えていく必要があると思っています。またそれは、『道徳』に限ったことではなく、『国語』など他の教科でも教えていく必要があると感じています。」と、桝田先生はひとつの考え方を掲げている。そして、社会とのつながりを意識すれば、そこに子どもたちにとって身近なテーマとして、ケータイが連想されるのである。

 今回の授業で活用された教材は、『心のノート』から「考えよう、これからの社会とわたしたち」。『道徳』の教科書から「『ほしい』ってなに?『必要』ってなに?」。さらに、携帯電話機メーカーが提供している動画教材。そして、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉から「携帯電話5つの約束」のストーリーとまとめである。

 そして、独自に作成したワークシートに子どもたちの考えを記入させる狙いを持っていた他、事前に行った「情報モラルに関するアンケート」調査結果も資料として紹介された。

 「授業で活用できる教材は、探せばあるものです。ただし、研修会などの場で紹介されるものもあり、一般にはあまり知られていないのが現状ですね。」と話す桝田先生。「情報モラル」の指導に関しては、適切な教材を選定することでより効果的な授業が成り立つようである。

 

子どもたちに興味・関心を持たせる授業

ワークシートに記入
ワークシートに自分の考えを記入

あんしん・あんぜん情報モラル 携帯電話5つの約束

あんしん・あんぜん情報モラル

あんしん・あんぜん情報モラル

あんしん・あんぜん情報モラル

 

 

 

 「情報モラル」の授業は、タイムリーであることも重要であるとされる。子どもたちの周辺で話題になってる事柄を取り上げることで、授業を自分自身と照らし合わせることができる。

 今回の授業も、実はその一端を含んでいる。「最近、子どもたちのケータイをめぐるトラブルが急増しているという報道を見聞きします。こうした内容は子どもたちにだけでなく、是非すべての家庭の保護者に参観していただきたいと思っていました。学校だけではなく、家庭の方のご理解と連携が大切です。」と話す桝田先生。それでも、教室の後方には熱心に授業を見つめる保護者の姿もあり、関心の高さを感じることができた。

 さて、授業は先日の教育再生懇談会の発言から入った。『小・中学生に携帯電話を持たせるべきではない』とする提言を知っているかという先生の問いかけに、クラスの2/3ほどが「知っている」と挙手した。クラス内の携帯電話の保有率が56%ということからもわかるように、この提言への関心は高い。子どもたちは、政治の話題でも自身に影響がありそうな事柄については敏感なのである。

 そこで、さっそくワークシートに向かわせる。
「『小中学生にケータイは必要ない。』と言われていますが、あなたはこの意見に賛成ですか。反対ですか。」という問いに対して、『賛成:3名 反対:18名』という結果が出た。これは子どもたちの素直な気持ちであろう。

 続いて、先生はプロジェクターを用意し、動画教材の中から、夜遅くまでメールを繰り返す友達どうしの困惑する様子が描かれたアニメーションを提示した。そして、その後、メール本来の特性について触れ、マナーの大切さを子どもたちに訴えた。

 さらに、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉の中から『携帯電話5つの約束』のストーリーとまとめを提示した。『あ・い・う・え・お』の頭文字で記憶するこの5つの約束には、子どもたちも大いに納得した様子で、次のワークシート「子どもが安全にケータイを使うためにはどうしたらいいと思いますか。」という欄に様々な意見が書き込まれていた。

あんしん・あんぜん情報モラル ストーリーを提示

~ワークシート『子どもが安全にケータイを使うためにはどうしたらいいと思いますか。』への子どもたちの記述(一部抜粋)~

■ルールを守る。メールを長くやらない。

■危ないサイトを開かない。危ないメールが来たら読まないで消す。

■人が嫌だと思うようなメールを送らない。インターネットにアクセスする時は必ず家の人に相談する。変なメールが来ても反応しないで家の人に言うか無視する。家の人とケータイについての約束をして使う。

■約束をきちんと守って、嫌だな変だなと思ったら、すぐに相談する。

■ 今日勉強した「あいうえお」を守る。ケータイに夢中にならず、きちんと勉強する。料金は決めておいた方がいい。

 

 「〈あんしん・あんぜん情報モラル〉は、とても使いやすい教材であると思います。情報教育に詳しくない先生でも、簡単に、必要な部分だけを切り出し、授業の展開に合わせて活用することができます。今回活用した『携帯電話5つの約束』も、『あ・い・う・え・お』の頭文字を使って記憶させる点で大変効果的でした。」と、情報モラルの指導に手軽に活用できる点で高い評価をいただいた。

 

 

〈あんしん・あんぜん情報モラル〉の責任と役割

桝田佳江先生

ワークシート

桝田佳江先生
桝田佳江先生

 〈あんしん・あんぜん情報モラル〉をはじめとする教材をひとつの授業の中で効果的に活用することで、その成果がワークシートへの記述の際に顕著となる。
 子どもたちは、動画ストーリーを、熱心に見つめていた。おそらく共感できる部分がたくさんあったと思われる。日常的で身近なテーマとして受け止めることで、さらに真剣に桝田先生の言葉に耳を傾けていた。
 桝田先生は、「より良く生きるためにはどうすればいい?」と子どもたちに問いかける。そして、「是非、マナーを守り有効に使いましょう。」と子どもたちに訴えかけた。さらに、「ケータイがなければコミュニケーションが成り立たないのでありません。コミュニケーションの基本は、人と人なのですよ。」と子どもたちに語りかけていた。
 ワークシートの3番目の記述内容は、「今日の『情報モラル』の授業を受けて、考えたことや思ったことをできるだけ具体的に書いてください。」というものであった。
記述の一例を紹介すると・・・。

■ちゃんとケータイのマナーを守れば、子どもにケータイを持たせることができるんじゃないかなぁ、と思いました。

■ケータイのルールを大人から教えられていても悪いと知りながらやるのは自分の責任だと思いました。

■夜おそくまで塾や習い事に行っている人がたくさんいるから、小中学生にもケータイは必要だと思いました。また、ケータイを持つためにも「あいうえお」のようにルールを守らなければいけないなと思いました。

■携帯電話は便利だけど、危険なこともいっぱいあると思いました。

 

 今や社会では、携帯電話を便利な道具として活用する場面が多数存在している。そして、子どもの世界においても、携帯電話がひとつの価値観を生み出している。「子どもの安全を確保する為、習い事の送迎や兄弟の平等化など、携帯電話を必要としている家庭もたくさんあります。しかし、携帯電話を利用する上でのルールをつくっていないという家庭も多く存在しています。今回の授業を通じて、もう一度親子で話し合ってもらえれば、うれしいのですが。」と桝田先生は学校と家庭がさらに一体となって情報モラルに取り組める環境づくりを願っていた。

 

 

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