授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

三重県 四日市市 学校法人暁学園 暁小学校

〈あんしん・あんぜん情報モラル〉で

情報モラル指導の全体像を再構築。

 

6年生 情報モラル
〈キューブきっずシリーズ〉
〈あんしん・あんぜん情報モラル〉活用事例 

 

2007/01掲載

 

暁学園暁小学校

 

 三重県四日市市は、県の北部に位置し、伊勢湾に面した温暖な気候の地域である。工業都市としてのイメージが強いが、かつては東海道の宿場町として栄えた歴史を持ち、『毎月4日に市(いち)が開かれた』ことが地名の由来とも言われ、商業や農林水産業も盛んである。現在は人口が30万人を超え、中核市としてさらに発展を遂げようとしている。
 今回は、その四日市市に本部がある学校法人暁学園が経営する暁小学校で、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉の授業を見学した。系列全校が一体となりメディアリテラシーの体系化を軸に置いているという同学園で、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉の活用場面を確かめることができた。

 

幼稚園から大学までを擁する三重県唯一の総合学園

 

 

 

 学校法人暁学園は、昭和21年に『人間たれ』を学園教育綱領として掲げて創立され、現在では、暁幼稚園をはじめ、小学校、中高6年制、3年制高校、4年制大学、 看護医療大学を擁する三重県唯一の総合学園である。幼稚園から大学まで一貫して、学園綱領「人間たれ」に基づき、心豊かな人間を育む、特色ある教育を実践している。
 暁小学校の創立は昭和23年。間もなく開校60周年を迎えようとしている。現在の児童数は487名で、市内から通う児童はおよそ60%。県外からの児童も20名ほどいる。 1年から6年まで全学年3クラスの構成になっている。

 

手軽にIT活用を実践できる基盤を整備


コンピュータ室のほか、各教室でITを活用した教育の為の環境が整備されている。

 暁小学校では、平成7年に新校舎が完成してコンピュータ室が設置されたのを受け、平成8年度より全校児童を対象に情報教育が行われるようになった。
 暁学園の広域ネットワークは、光ファイバーを利用したブロードバンド回線により構築されている。小学校内も全教室がネットワーク化され、インターネットに接続できる環境にある。コンピュータ室には児童用パソコン36台が設置されている他、3年生以上の教室にもコンピュータが設置されている。
 先生用としては、ひとりに1台のパソコンが提供され、職員室での校務をはじめ、各教室に持ち込んで大型プロジェクタに接続しての授業なども頻繁に行われている。
 この他では、この他では、各階に設置されている大型のプラズマディスプレイやプロジェクタ、タブレット系教具などもそろい、ITを活用した授業が手軽に実践できる環境が整っている。

 

子どもたちの学習意欲を引き出すためのIT活用


水谷教頭先生


暁小学校の特色ある教育の1つが『英語教育』。アメリカの小学校とのネットワークを利用した交流学習も行われる。

 

 「本校では、『情報教育』を1年生の授業から正規の授業時間割に組み込み、カリキュラム化されていることで子どもたちが体系的に学習できる状況にあります。」と水谷浩三教頭先生。「コンセプトとして、パソコンは自分の思いを表現する道具という位置づけと、自分とネットの向こうの人を結ぶ道具であるという位置づけでカリキュラムを策定し、ネットワークを活用した交流学習やパンフレットなどパソコンによる創作活動を推進しています。」とのこと。その水谷教頭先生自身も1年生と2年生の『情報教育』を担当して教壇に立っていることからも、学園としての熱心な取り組みを推察することができる。

 ネットワークを活用した交流学習という点では、テレビ会議が特徴的である。そのひとつは、毎月1回、アメリカのサンフランシスコにある小学校と行っているテレビ会議である。
 暁小学校の特色あるもう1つの教育が『英語教育』である。同校には、現在、ネイティブの外国人教師が5名いる。テレビ会議は、その授業で学んだ英語を使って海外の子どもたちとコミュニケーションを図ることを目的に行われている。サンフランシスコの学校の子どもたちも日本語を学習している点で共通しているため、お互いに意欲的な学習機会になっているという。
 また、国内の離れた学校とのテレビ会議も継続的に行われ、『方言交流』というテーマで北海道・東京・名古屋・福岡・沖縄の小学校との交流学習が実現している。水谷教頭先生によれば、「また、テレビ会議を軸として、インターネット上のメディアを活用した授業へと継続していきます。」と話す。
 これは、テレビ会議の続き学習などをインターネット上のチャットや掲示板を利用して行うものであるが、「このような取組みを行い、コミュニケーション上のトラブルが発生することもあります。その都度『情報モラル』の学習が必要となり実施してきましたが、学校だけでなく、家庭でのインターネット利用、子どもたち同士の携帯メール利用の広がりに対応する為、体系的に『情報モラル』学習に取り組むことを検討してきました。」(水谷教頭先生)とのこと。
 そこで教材として選ばれた学習コンテンツが、スズキ教育ソフトの〈あんしん・あんぜん情報モラル〉である。

 

情報モラル学習:
『その書き込み、読み手にどう伝わるかな?』の授業


鈴木逸男先生

 


デジタルコンテンツを教材として便利に活用し、教師の的確な指導がさらに子どもたちの理解を深める。

 


〈あんしん・あんぜん 情報モラル〉に付属するワークシートを使い、感想を記入。

 

 

 この日は、6年A組の情報モラルの授業を見学した。学習課題は、『その書き込み、読み手にどう伝わるかな?』である。このテーマは、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉のコンテンツに則っている。6年生の情報教育の授業を担当するのは、 A組の担任を努める鈴木逸男先生。担任制と教科制が併用される中、情報教育は教科制に入る。

 授業では、まず、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉の“コミュニケーションと掲示板”というテーマの中から『その書き込み、読み手にどう伝わるかな?』の導入ストーリーを子どもたちに見せた。このムービーは、子どもたちに興味をわかせるように工夫されている。

 ムービーの内容は、本当は仲の良い友だち同士が、掲示板に書き込んだ言葉の表現によって周囲から“実は仲が悪いのでは?”という誤解を受けてしまうというストーリーである。子どもたちにとっては大変身近なテーマだけに、全員が画面を注視して見入っている姿が印象的であった。

 続いて、「なぜ、このような勘違いが起こってしまったのだろう?」という鈴木先生からの投げかけで、子どもたちは、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉に付属している“ワークシート”にそれぞれの感想を記入し、さらに発表が行われた。『文字だけでは伝わりにくい』や『表現が曖昧になる』など、掲示板のデメリットが並んでいく。

 さらに、鈴木先生は、文字だけの表現がどのくらい伝えにくいかという例として黒板に『ちょっとどいて』と書き、これを子どもたちに声に出して発言させた。強い口調の子もいれば、遠慮がちに言葉にする子もいて、それぞれに感じ方に違いがあることをみんなが実感していた。
 以前に学んだ掲示板のメリットとも照らし合わせて、「では、どのような工夫をすればいいのだろう?」という解決策が探られた。子どもたちからは、『前後に文章を付け加えることで雰囲気がよく伝わる』などのアイデアが出された。
 こうして、子どもたちは、一様に文字だけの表現の難しさを感じたことであろう。

 

 

〈あんしん・あんぜん情報モラル〉で情報モラルの学習を体系化

 

 「子どもたちの携帯電話の使用に際しては、本当に身近なところでトラブルの原因が考えられ、情報モラル指導の必要性を強く感じています。」と鈴木先生。水谷教頭先生も、「子どもたちが携帯電話を使いはじめた後では、情報モラルの指導も素直に心の中に入っていきません。遠距離通学の関係上、学校への携帯電話の携行を許可している背景もあり、低学年の頃から積極的に指導を行う方針を掲げています。」とのこと。
 特に4年生の段階では、調べ学習やテレビ会議などの授業が行われることもあり、一般的なネチケットや掲示板の使い方を指導しているという。また、6年生では、1学期の日曜参観の時に、親子で携帯電話の扱いについ
て学ぶ機会をつくるなど、積極的に取り組んでいる。この他では、各家庭との個別対応や家庭向け通信の中で使い方の啓蒙を行っている。

 〈あんしん・あんぜん情報モラル〉に関しては、「事例ムービーがあって、それについて考え、まとめるという展開で構成され、情報教育に不慣れな先生でも授業を行うことができると思います。しかも、教育的学習がしっかりと盛り込まれている点で、今後も大いに活用していきたいと考えています。」と水谷教頭先生は期待を寄せている。また、鈴木先生は、「子どもたちが直面している出来事を大きく取り上げることもでき、日常に即した授業案をつくることができます。」と話す。来年度以降の情報モラルのカリキュラムを、この〈あんしん・あんぜん情報モラル〉のコンテンツを機軸の策定しようという案も浮上しているという。

 暁小学校では、まずは国語や他の教科の中で「情報」的な内容を取り上げ、やがて高学年になるにしたがって独立した授業へと発展させようという狙いがある。
 同学園全体で構成する情報教育推進委員会では、メディアリテラシーの体系化が検討され、小学校段階だけでなく、中学・高校・大学に至るまでの構想が練られているという。
 「情報モラルの指導に関しては、学校と家庭、そして子どもたちとの信頼関係を結ぶための架け橋として、組織的に取り組んでいきたいと考えています。そして、暁小学校におけるICTを活用した効果的な授業、情報教育の実践は、学園の責務である“学力の保障”に直結します。これからも、地域に信頼される学校として歩んでいきたいと思います。」と水谷先生は力強く語ってくれた。
 暁小学校をはじめとする学校法人暁学園において、〈あんしん・あんぜん情報モラル〉が情報モラル指導のひとつの指針として位置づけられる時、単なる教材としてだけではなく、それ以上の大きな責任と影響力を持つことになるだろうと感じた。

 

 

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