航海の安全を見守り続ける灯台の役割に象徴されるように、正しく迅速な情報伝達の重要性はいつの時代も変わらない。そして情報の伝達は、連絡する側・受ける側お互いの信頼関係に大きく影響する。
今の社会では、固定電話の利用が減り、携帯電話による連絡やそのメール機能による情報のやりとりがコミュニケーションの主役へと移り変わってきている時代。このように情報が発達した時代において、学校もいち早くそれに追随した方法をとることが待ち望まれているのかもしれない。
前方に広がる東シナ海に挑む枕崎漁港の漁船群。一本釣りのカツオ漁は有名。
校庭には、大きく枝を広げた樹齢100年を超える同校のシンボル「くろがねもち」の木が子どもたちを見守っている。
枕崎市立枕崎小学校
本土最南端、カツオのまち、枕崎。
鹿児島県枕崎市は、鹿児島湾を取り囲むように伸びている二つの半島(大隅半島と薩摩半島)の西側にあたる薩摩半島の南端に位置している。
鹿児島市内からは、JR九州指宿枕崎線の終着「枕崎」駅が市街中心部にある。ここは、日本本土最南端の始発・終着駅としても知られ、映画やテレビなどのロケ地としても使用されたことがある。
枕崎市は、なんといってもカツオ漁が有名。年間のカツオの水揚げ量は約4万トンで、「カツオのまち」として全国にその名を馳せている。漁業は、沿岸漁業と遠洋漁業に分かれ、遠洋漁業のカツオの一本釣りは豪快そのものである。
漁業の他には、カツオ節製造を中心とした食品加工業や温暖な気候風土を利用したお茶をはじめとする農林業も盛んである。人口は、漁業に携わる人の流出にともない減少傾向にあり、昭和30年代の約35,000人をピークに、現在は約25,000人が暮らしている。
そして、枕崎市といえばもうひとつ、台風シーズンにおける本土への台風上陸の通過地点としてもニュースなどで度々その地名を耳にする。この影響もあり、気候は温暖なものの、「多雨」な土地柄でもある。台風をはじめとする自然災害の危険が考えられる時、学校は、状況を適切に判断し最善の対処を迅速に行うことが迫られる。
今回は、枕崎小学校で、連絡メールシステム〈キュート連絡網〉がどのように活用され、また、学校と家庭との連携がどのように変化したのかを伺った。
本坊校長先生(右)と益永先生(左)にお話を伺った。
学校内で管理できる機器環境が安心。
2005年10月から連絡メールシステム〈キュート連絡網〉の活用をはじめた枕崎小学校は、現在、
児童数569名に対して、連絡メールシステム〈キュート連絡網〉への登録は400名以上にのぼっている。
本坊修二校長先生によれば、「最初は、携帯電話のメール機能を活用した連絡システムに疑問を投げかける家庭もありました。しかし、PTAからの働きかけ
や、口コミなどの影響もあり、少しずつ登録者数が増えていきました。これまで順調に活用しています。」とのこと。
また、情報教育に携わっている益永秀一先生は、「これまでに、連絡システムへの登録の案内は、合計で3回ほど家庭に配付しました。その都度、登録者数は増えてきましたが、実際には、本校の先生が行っている『親子スポーツ教室』の開催・中止などの連絡に利用するようになってから、多くの支持を得るようになりました。」と振り返る。
導入のねらいとして掲げられた『利便性』『迅速性』『簡便性』も、その想定のとおりで、「情報が早く伝わり、わずらわしさもなく、非常に便利に活用しています。」と本坊校長先生も当初の目的を十分に果たしている感触を得ているようであった。
さらに、機器環境について、益永先生は、「学校内で全てを管理できるのも大きなメリットです。」と実感している。外部サーバ上で運用する形態ではないことから、個人情報の流出への懸念も最小限に食い止めることもでき 、また、機器環境を把握するわずらわしさもないなど、〈キュート連絡網〉のしくみには、安心感があるのも事実である。
“県警あんしんメール”の内容をキュート連絡網を使って、保護者に転送。
“県警あんしんメール”」を転送する連絡メール「管内の不審者情報について」
クラス毎の連絡メール「6の2あいさつ運動のお知らせ」
PTA送別会のテレビ放送案内
多様な利用場面で積極的に活用
枕崎小学校では、連絡メールシステム〈キュート連絡網〉の活用に際して、厳格なルールは設定していない。メール送信の案件が発生するごとに、口頭で本坊校長先生に承認を得て、教頭先生が実際に内容を入力して送信を行っている。
案件は、登録者全員向けのものから、各学年やクラス向けのものまで比較的自由に設定されている。中には、先生間の連絡事項にも〈キュート連絡網〉を利用することがあるという。つまり、頻繁に活用することによって、〈キュート連絡網〉のメリットを最大限に生かそうという姿勢がある。
実際に、これまでに活用された場面を列記してみると・・・。
『グランドゴルフ中止の案内』
『集団下校の連絡』
『不審者情報の伝達』
『PTA集会時の駐車場の案内』
『イベント参加への直前確認連絡』
『テレビニュースの案内』
『あいさつ運動への協力連絡』
『先生向けレントゲン検査の案内』
『卒業アルバム用写真撮影の直前連絡』など
『集団下校の連絡』では、台風シーズンを控え、その訓練が行われた時のものである。集団下校から地域の指定解散場所へ子どもたちが到着した後、保護者に迎えに来てもらうための連絡で、その時刻を「今、子どもたちが集団下校で学校を出ましたので、指定解散場所には、○時頃に到着します。」という内容を送信している。正確な時刻を把握できるため、保護者も安心である。
『不審者情報の伝達』は、鹿児島県警が教育関係者を中心に情報発信している「県警あんしんメール」の中から、周辺地域に関連した内容を転送して登録者に送信して
いるもので、いち早い対応が可能になり、子どもたちの事件被害を未然に防ぐことにつながっている。
『テレビニュースの案内』では、枕崎市特有の、新しい先生を学校に迎える際にカツオで歓迎するという行事の様子が、テレビで放映されるのを事前にメールで伝えたり、PTAの送別会の様子が地域ニュースで
放送されたりすることが伝達された。
職員室にあるこのパソコンから連絡メールが発信される。写真は教頭先生。
教頭先生から校内の先生方に向けて発信された連絡メール「レントゲン検査の準備について」
本坊修二校長先生
益永秀一先生]
益永先生は、校内イントラ向けに自らCGIを組み込んだ「ICT職員室」も構築。このシステムは「キュート連絡網」、「キューブきっず」とともに、枕崎小学校における教育の情報化を支えている。
家庭と学校との距離を縮めた
連絡メールシステム〈キュート連絡網〉
「子どもたちの気質は、漁師町を反映して、とても人なつっこい性格です。」と話す本坊校長先生。そして、「やはり外部への関心は高く、インターネットが子どもたちの世界を広げているのは確かですね。」と、子どもたちの日常にコンピュータが広く浸透していることを感じている。
枕崎小学校でも、小学校向け教育用統合ソフト〈キューブきっず〉が活用され、「総合的
な学習の時間」でリテラシー指導が行われたり、各教科の中で実際に情報教育が行われたりしている。離れた学校との交流学習も実施されるなど、熱心な取り組みが行われている。
そうした学習支援と並行して、連絡メールシステム〈キュート連絡網〉や独自の校内イントラによる校務支援も順調に動き出したことで、先生
同士の連絡が綿密になった他、学校と家庭との連携も強まったという。
本坊校長先生によれば、「それまでの書面だけによるやりとりの時に比べて、保護者と学校との距離は、確実に近づいたと思います。学校としては、新鮮な情報を迅速に伝えることができ、信頼関係を築くきっかけになっています。」 とのこと。
また、益永先生は、「緊急の連絡の時など、先生一人ひとりの負担は確実に減りました。」という。兄弟や姉妹で通学している家庭には、一度のメール連絡で済むことになり、また、固定電話による連絡網よりも確実性があるなど、大きなメリットを感じているようだ。
連絡メールシステム〈キュート連絡網〉の広がりは、これまでよりも一層家庭と学校を近づけ、相互の信頼関係構築に大きく寄与することが期待される。