“校務の情報化”推進リポート

School Now

静岡県 浜松市立笠井小学校

キュート連絡網で

保護者に一斉にメール配信。

学校と家庭・地域を結ぶ

迅速な連絡体制で、学校の信頼が高まる。

 

連絡メールシステム〈キュート連絡網〉導入事例   

2006/02掲載

 

 学校と家庭・地域の連携推進は、学習場面においては、地域の方にゲストティーチャーをお願いしたり、地域調べの学習などを通じて交流を図るなど、様々な機会がつくられるようになってきた。また、今日、学習面だけでなく、子どもたちの安全を守る取り組みにこそ、学校と家庭・地域の連携の必要性が叫ばれている。
 このように連携が深まる中で、学校から家庭・地域へリアルタイムに情報を発信していく場面では、必然的にスムーズな情報のやりとりが今後ますます必要になってくる。

 今、効果的にその役割を果たすツールに、変化が起こっている。それは、『携帯電話のメール機能』の活用である。
 今やほぼ一般化された感のある携帯電話のメール機能は、日常的なコミュニケーションツールとして浸透している。このツールを効果的に活用することで、学校と家庭・地域との連携がさらに緊密になることが期待できるのである。
 今回は、携帯電話のメール機能を活用した〈キュート連絡網〉を導入している静岡県浜松市立笠井小学校を訪問した。

 


森下校長先生(右)と間宮先生(左)にお話を伺った。


間宮先生はキュート連絡網他、笠井小学校の情報全般を担当。
同校からの連絡メールはこの職員室のPCから発信される。

 


70%を超える保護者がメール登録

 静岡県浜松市立笠井小学校は、昨年6月から、パソコンのメールソフトを活用した連絡システムの運用をはじめていた。
 これは、森下正巳校長先生が、前任校でも実施していたもので、それと同様のシステムを笠井小学校でも実施しようとするねらいがあった。

 「前任校で情報アドバイザーとともに保護者との連絡メールシステムを立ち上げ、運用していました。評判も良く、80%の家庭が、メールアドレスをこのシステムに登録していました。もっとも、保護者への連絡は、このメールシステムが核ツールではなく、通常の電話連絡網がメインでした。」と森下校長先生は振り返る。

 笠井小学校では、浜松市内の教務主任会の部長を務めている同校の教務主任・間宮先生が中心となって、平成17年6月に、保護者宛に「連絡メールシステムへの登録」のお知らせが作成され、配布された。学校側からは、子どもを通じて渡されたこの一枚の案内書が、結局唯一の告知ながら、登録者数は徐々に増加し、12月には70%を超えるほどになった。

 もっとも、当初の反応は、「15%程度でした。その後、機会あるごとに、メールでニュースを流していきました。それが、次第に保護者の間で評判として広がっていきました。」と、間宮先生は当時の状況を振り返る。そこには、メール登録の必要性が実感できるような情報発信を繰り返すことで、保護者にその有効性を認識させていった経緯が読みとれる。
そして、パソコンによるメール連絡システムが運用されてから約半年が経過した12月、笠井小学校では、より有効性の高いシステムとして〈キュート連絡網〉を導入することになった。



学校から配信された連絡メール

 

携帯電話向けホームページ(上)。
学校行事予定も掲載されている(下)。


3月の行事予定

連絡メール送信確認書
発信するメールの学校内承認も〈キュート連絡網〉ならそのまま校務文書の形で印刷することができる。

発信内容が確実に伝わるシステム

 保護者が、ともに仕事に就き、夜になるまで不在となる家庭が多い一方で、学校側は保護者への連絡を滞りなく発信する必要をもっている。緊急性が高ければ、少しでも早くという思いになるが、保護者が常時在宅している家庭は少ないのが現状である。

 そこで、固定電話を介した連絡網を補完する仕組みとして、携帯電話のメール機能を活用した連絡システムが有効になる。今や携帯電話は、普及率も高いため、確実に伝達が行き届く可能性が高い。しかも、これまでの電話連絡網と異なり、一斉にリアルタイムで情報が伝わるため、連絡ミスや内容の誤認なども発生しない。さらに、受け手が情報を着信したかどうかの有無も、学校側で確認できるなど、きわめて迅速性が高いのである。

 〈キュート連絡網〉を導入した笠井小学校では、活用から2ヶ月で10回程度の連絡業務を行っている。現在は、メール登録者全体への情報配信を基本として、電話による学級連絡網を補う手段として位置付けられている。

 「発信する情報に関しては、精選する必要があります。むやみに送ればいいというものでもありません。ただ、今のところ、詳細なルールは決められていません。」と森下校長先生。間宮先生も「メール連絡に際しては、『連絡メール送信確認書』を用いて、内容を吟味した上で学校長の承認を得て、最終的に配信という手続きを行っています。」と発信の責任を認識している。これによって、発信内容の確実性も増し、学校への信頼も維持されることになる。

 この他では、〈キュート連絡網〉の『携帯用ホームページ作成機能』も効果的に活用されている。メールで送信した内容が、同時に携帯用ホームページに掲載されるこの仕組みは、万一、メールを消去してしまった際にも閲覧できるなど過去の記録としても役立つ。

 笠井小学校では、毎月の『学校だより』の内容をパソコン用の学校ホームページにアップしている。このような学校ホームページの更新情報や行事予定も、携帯用ホームページにも掲載している。これにより、保護者は、自分の携帯電話からい

 

 

 


森下正巳校長先生

 

 

キュート連絡網が
学校と家庭・地域の絆を深める

 〈キュート連絡網〉の活用は、保護者からは一様に歓迎されている。『メールによる連絡システムを導入してくれて良かった。』という声が寄せられているという。これは、学校と家庭、双方にとって有益なものであったことがわかる。
「本来は、学校も望み、家庭も望んでいた。しかし、なかなか実現できなかった。それは、学校側にこのようなメールシステムを活用しようというイメージがなく、発想ができなかったのです。つまり、認識が不足していたと言っていい。」と森下校長先生は話す。

 これまでのメールシステムの活用例としては、夏の節水型新プールのテレビ取材日の連絡や台風による休校のお知らせ、PTA奉仕作業の直前確認連絡(以上は旧システム)の他、不審者情報やホームページ更新のお知らせ、学校防災活動の新聞掲載の連絡、行方不明児童の情報提供のお願いなどがある。

 この中で、「行方不明児童の情報提供のお願い」時には、保護者から情報が寄せられたり、実際に心当たりの付近に出向いてくれたりと、緊急性の中で迅速な対応が図られた。結局、大事には至らず、児童も無事に帰宅したのであるが、学校と家庭・地域との絆を再確認することになったという。

 「学校と保護者にとって何が本当に必要なのかを考える時、『利便性を感じるもの』こそが望まれているものであると思います。そのためには、何事もシンプルな方がいい。いつでも情報を取り出すことができ、お互いにキャッチボール(コミュニケーション)ができるのが望ましいのです。」と森下校長先生。

 間宮先生も「今後は、例えば翌日の持ち物確認というように、学年ごとやクラスごとなどで、活用を推進していきたいですね。」と活用イメージを描いている。

 10年前は、ひとりひとりが自分のパソコンを活用するのが、まだ夢だった時代。今、それは現実のものになりつつある。ましてやGPSにより、子どもを守る時代が到来している中で、「行政サイドで、〈キュート連絡網〉のようなツールの導入を検討する時代が訪れたとも言えます。」と森下校長先生は、時代の変化を適切に見据えている。

 

 

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