授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

京都府 京都市立藤城小学校

子どもたちの夢の創造へ。

校内LAN整備を背景に、

あらゆる学習場面で さらに広がる

コンピュータ活用。

~授業改善に向けた先生全員の取り組み~

 

6年生 国語 5年生 算数
〈キューブきっずシリーズ〉活用事例 

2006/04掲載

 

 

 近年、情報教育関連の研究指定校の役割は、大きく変化している。
 先進的なコンピュータ活用の可能性を探る方向性から、他校でも環境さえ整えばすぐにでもはじめられるような実践的な取り組みが多く見られる。そして、「情報教育担当主任」の先生も、コンピュータに詳しい先生ばかりがその任務にあたるのではなく、昨日まで通常の授業を行っていた先生が担当する学校も見受けられる。
 今、学校は、まちがいなく「誰もがコンピュータを活用する」という未来像に着実に近づいている。

 

京都市校内LAN整備研究指定校(平成15・16年度)


周辺に公園もあり、緑豊かな藤城小学校。

 

 日本の歴史の断片がいたる所に息づく京都。市内を少し巡るだけで、いくつもの寺院や仏閣に出会う。それはまるで生きた歴史教科書のようでもある。
 京都市立藤城小学校があるのは、市の南端にあたる伏見区。区の西側は桂川、鴨川などが織り成す京都市街から続く平地、東側には南北に広がる丘陵地帯。丘陵の入り口には、伏見桃山陵など名所・旧跡が点在する。
 校舎が、すぐ南側の伏見桃山陵と隣接する藤城小学校は、静かな住宅街の一角にある。

 同校は、平成15・16年度の2年間にわたり、市内の学校のLAN整備のための研究指定を受けた。
すでに研究指定の期間は終わったものの、さらに情報教育への取り組みは続き、実践発表などを行っている。京都市では、藤城小学校の研究成果を踏まえ、今後5年計画で市内全小学校の校内LAN整備を推進していく予定である。

 

 

〈キューブ〉を使ってみたい


鈴木光生 校長先生

 

 LAN整備に関する研究指定を受けたものの、当初は、先生全員が手探りの状態であった。その時、鈴木光生校長先生は、積極的に研修会への参加を先生に呼びかけたという。
「先生の意識を変える絶好の機会であると思いました。学校の中だけで考えていても何も始まりません。そこで、外に出よう、外部の力を積極的に導入していこうと考えました。」と鈴木校長先生は振り返る。
 ある時、研修会に参加した際に、〈教育用統合ソフト キューブきっず〉の紹介プレゼンテーションと出会った。その時、ある先生が『このソフトを使ってみたい』と申し出たという。

 「これからは、コンピュータに詳しい先生がすべてを行うのではなく、普通の先生の意見が大事なんです。ただし、京都市内の160以上の学校の将来がかかっている重要な責任があります。それでも、先生方の『使ってみたい』という意識を実現させたいと思いました。研究の達成と先生たちの夢を実現するためのツールとして、その時に〈キューブきっず〉を選択することになりました。」と、全校一丸となって取り組みがはじまる経緯を、鈴木校長先生は、笑顔で話す。そこには、子どもたちへの思いが詰まっていたのだろう。

 

 

有線LANと無線LANを併用してネットワーク

 

 

 藤城小学校では、「学習系ネットワーク」と「事務系ネットワーク」にネットワーク環境を大別して校内LANを整備した。
 「学習系ネットワーク」は、『確かな学力』と『生きる力』をともにつける有効な道具として位置づけ、コンピュータ室、普通教室、特別教室、職員室を結び、「事務系ネットワーク」では、校長室と職員室が結ばれた。
 これらにより、授業での活用はもちろん、職員会議などもコンピュータを経由して開催するなど、新しい試みが行われた。また、普通教室や特別教室などには、無線LAN用アクセスポイントがあり、有線LANと併用されている。

 

授業改善のためのツールとして



 


 


寺田潤子 先生

 

 校内LANシステムを効果的に活用しながら、授業改善を行っていくにあたり、同校で頻繁に活用されているのが〈キューブきっず〉の「けいじ板〈キューブボード〉」である。
見学した5年生の授業では、算数の「少数のかけ算・わり算」の授業で「けいじ板」が活用されていた。
 まず、二人一組で出題を考える。それを「けいじ板」に掲載する。すると、「けいじ板」には、一斉に問題が掲載される。それを子どもたちが順次選んで解答していくのである。
教室のあちらこちらから「12番の問題は難しい」や「7番の問題は簡単だよ」というように声が上がっていた。そして子どもたちは45分の短い授業の中で数多くの問題に触れることができた。

 また、6年生の授業では、国語の「意見文を書こう」の授業で「けいじ板」が使われていた。
 『学級文庫にマンガを置いてもいいか?』というテーマに対して、それぞれが思い思いの意見を記述していく。ひとつの意見が「けいじ板」に掲載されると、次はそれに対しての同意・反論などの意見が書き込まれていく。
 いくつものやりとりが行われたり、意見を交わしていくうちに、新しい考えに出会ったりして、子どもたちの気持ちは揺れ動き、思考が深まっていく。

 前情報教育研究主任であり、現在はフリーの立場でTTの授業を受け持つ寺田潤子先生は、「人前でなかなか意見を言えない子どもでも、『けいじ板』に書き込むという活動であれば、自分の考えを表現できることもあります。〈キューブきっず〉では、子どもたちにとっても教師にとっても校内ネットワークが簡単に活用できる工夫があって、共有フォルダ「ポケット」もその一つですし、教育現場に適した工夫…例えばワープロに原稿用紙モードがあるので活用しやすいですね。」と話す。

 

 

日常の中で当たり前のように使う


岡本敦子 先生

 


伊藤章利 先生

 


けいじ板〈キューブボード〉を使って、校長先生から毎日発信されるメッセージ。
取材当日は台風が接近していた為、台風の情報が掲示された。

 

鈴木校長先生は、「コンピュータの活用は、授業改善を図るツールであり、最終的には学力向上が達成できることを願っています。指導力は確実に向上していると実感できますし、子どもたちも伸びていることでしょう。」
と成果に手応えを感じている。
研究主任の岡本先生は、「今では、プロジェクタの使用も予約が必要なほど、みんなが使っています。これまでの蓄積を糧にして、学習面での基礎・基本をさらに向上させていきたいと考えています。」と意気込みを話す。
また、伊藤先生も、「コンテンツの活用も、既存のデジタルコンテンツを利用したり、算数などでは提示型の自作コンテンツなどを授業で活用しています。それらを共有フォルダに入れて、先生全員の資産としています。」と体制づくりも万全である。

藤城小学校では、朝一番に登校するのは鈴木校長先生である。
朝、ひとつひとつの教室の窓を開けて回り、同時に各教室に設置された パソコンをログインしていく。朝、教室に来たときにパソコンが起動しているからすぐに触れることができるということも、先生方・子どもたちがパソコンに馴染むことへの工夫である。
そして子どもたちは朝一番、教室のパソコンで〈キューブきっず〉の「けいじ板」を覗く。
そこには、校長先生から子どもたちに向けてのメッセージが毎日更新されているからだ。
校内LANを活用したコミュニケーションは校長室と子どもたちを、さらに近い距離で結んでいる。

「日常の中で当たり前のようにコンピュータを使える先生を増やしていく。これが授業改善につながっていくのです。」という鈴木校長先生の言葉が、力強く聞こえた。
普通の先生が、普通に授業の中でコンピュータを活用して授業改善に努めていく。藤城小学校の姿は、夢物語ではなく、どこの学校でも実践可能な日常風景であった。

 

 

 

 

ページのトップへ戻る

スズキ教育ソフト