インタビュー&コラム

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特集中学校プログラミング教育②

新しいプログラミングの授業の実施に
向けて~生徒目線の授業デザイン~

神奈川県 三浦市立南下浦中学校 総括教諭
行天 健 先生

(2020/11掲載)
※記載の情報は取材当時(2020年7月)のものです。

来年度(2021年度)から、中学校では新しいプログラミングの授業が本格的に開始される。中学校での指導の現状と今後の展望について、神奈川県三浦市立南下浦中学校総括教諭・行天健先生にお話を伺った。

学校のICT環境の整備状況はいかがでしょうか。

コンピュータ教室にデスクトップPCが40台。さらに、昨年度から持ち運び可能なノートPCが導入され、普通教室でも無線LANを利用してインターネットに接続できます。台数としては生徒2〜3人に1台といった状況です。

プログラミング教材の導入も検討されていますか。

費用対効果等を考慮し、教育効果の高い教材を選びたいと考えていますが、見つけるのが難しいですね。具体的には、生徒が自分の考えを反映させやすい教材が良いと思っています。私は、生徒たちが自分で問題解決の方法を導き出せるような授業をしたいと考えています。そのためには、評価もそれぞれの生徒が見つけた解決策に対して適切に行う必要があります。教材も想定された答えを導き出すだけではなく、自分の考えを表現できるものかどうかが重要なポイントになると思います。

展開したい授業を想定した上で、導入する教材を選ぶ必要があるのですね。プログラミングの授業には、どのように取り組まれていますか。

毎年やり方を模索しながら行っています。今年は、基板を自作し、LEDやブザーを制御するという課題にしました。プログラミングの授業は、最終的にはコンピュータが無いと完成形にはなりませんが、その手前の「手順を踏んで考える」ということや「効率的に進める」といったことを学ぶ段階がおろそかになってはいけないと考えています。実際にプログラミングの活動に入る前に、コンピュータとはどういうものかや、情報伝達の特徴などを理解させるため、プリントや黒板を使って段取りを考える時間を設けています。また、最近では、生徒たちに馴染みのあるゲームを取り上げ、その内部的な仕組みがどうなっているのか考えることで、生徒たち自身がプログラミングの存在に気付けるような授業になるよう心掛けています。

新型コロナウイルス感染症対策で、技術の授業のカリキュラムを変更し、普通教室で授業を行う

身近な題材を例に出しながら、基本的な仕組みを解説する

中には、授業の内容に興味が持てないという生徒もいるのではないでしょうか。

はい。生徒たちがなぜつまらないと感じているのかが分かる、ということが大事です。そのために、生徒と同じような感覚を自分自身も持っていないといけないと思っています。私も教員になってから、間もなく20年になろうとしています。生徒たちと年齢の差が開いてくるにつれ、見ているテレビ番組や休日の過ごし方など、ずれを感じることが多くなってきました。技術の本質的なところに迫りながらも、生徒たちが楽しく、興味を持って学ぶことができるようにということは常に意識しています。

生徒の目線に立って授業を見る必要があるということですね。具体的に、題材はどのように設定されるのでしょうか。

題材は、自分が勉強してきた経験を振り返って考えることが多いです。そこから授業のヒントを見つけ、日々少しずつ考えを足しながら完成させていきます。時には、考えた題材が分かりやすいかどうか、他の先生や家族に意見を聞いてみることもあります。

常日頃、頭のどこかで題材について考えていらっしゃるということでしょうか。

はい。技術分野は生活の中にたくさんのヒントがある教科なので、日々アイデアをストックしておき、必要な時に引っ張り出しているイメージです。そうすると、あるときテレビ番組で関連の情報が出てきたときなどに、「これは授業で使えそうだ」と閃いたりします。

たしかに、身近な話題から繋がる授業には興味がわくような気がします。最後に、行天先生がプログラミングをはじめ、技術の授業を通して生徒たちに伝えたいことをお聞かせください。

授業を行っていると、日常生活の中で生徒が技術の有り難さや素晴らしさをあまり実感できていない状況が感じられます。でも、知らないだけで、技術にお世話になっている場面が身の回りにはいくらでもあります。そのことを少しでも知ってもらい、技術の大切さに気付いてもらいたいです。その上で、生徒たちがもっともっと勉強したいと思ってもらえたら嬉しいです。

また、プログラミングは、技術分野の他の内容の実習とは違う点があります。それは、失敗しても元に戻せるということです。生徒たちには、プログラミングの学習や実習を通して「とりあえずやってみよう」という気持ちをもってもらいたいです。そして、「絶対に無理だと思っていたことでも少しずつ改良していくことで完成形に近づいた」とか「自分が思ってもみなかったゴールに到達できた」といった体験をしてほしいのです。それが将来何か問題を解決しようとするとき、粘り強く取り組む力になるのではないかと思います。

それから、生徒たちはゲームや動画が好きですが、それは作り手によって提供された娯楽で、限られた範囲での楽しさでしかないということを話しています。プログラミングができるようになれば、そういったコンテンツを提供する側に立ち、だれかを楽しませることができるかもしれない。「つくる」という無限の楽しみがあるということを伝えていきたいと思っています。

三浦市立南下浦中学校 行天 健 先生に<カンタン!情報技術 ver.2>の2つのプログラミング教材をご覧いただきました!

製品をご覧になった感想をお聞かせください。

まず、若手・ベテラン、専門・専門外ということに関係なく使える内容になっている教材だと思いました。授業ガイド、スライド、プログラムの解答例まであるので、安心です。

技術分野の授業の中では、生徒たちにどの程度幅を持たせて問題解決をさせるかという点で、教師の力量が試されます。自由度の高い教材ですと、得意な生徒はレベルの高い作品を作れますが、苦手な生徒に対しては教師がサポートする必要が出てきます。一方、やることが決まっているキット教材は、全員が一定の完成度に到達できるのですが、生徒自身が考える場面が少なく、問題解決をしたという達成感や満足感はあまり得られません。

その点、カンタン!シリーズのプログラミング教材は、自由度の高い教材とキット教材のちょうど中間をとっている印象を受けました。クイズシステム、信号機の制御といった枠組みの中で、いろいろな迫り方や組み合わせ方が体験できます。

着地点をどのあたりにするか、指導される先生方は、皆さん悩むところだと思います。そういった悩みを軽減できる教材だと思います。

計測・制御のプログラミング教材は、信号機のプログラミングが題材になっていますが、先生の授業の中でも使えそうでしょうか。

はい。身近な光景が、プログラムによって制御されており、少しでもずれるとおかしなことになるという単純なことから、生徒たちがプログラミングの存在に気付き、意識できるようになる、良いきっかけになると思います。

また、視覚的にシミュレーションできるのも良いと思います。実は既に授業でも使ってみました。とくに3Dで表示されるのが、生徒の反応も良く、教材として魅力的だと思いました。生徒たちが作ったものが周囲にどのような変化を生み出すかというところまで検証できる教材は少ない気がします。この教材を使えば、プログラムによって、日常の生活で起こりそうな状況を改善する体験ができます。まとめの段階で使えば、社会全体の問題を解決する話に繋げることで、生徒たちにこれまでよりさらに広い視点を持たせることも可能なのではないかと思います。授業の導入、展開、まとめのどの場面でも使える教材だという印象です。

ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング教材は、クイズシステムを題材にしています。こちらについても、授業の題材としてはいかがでしょうか。

苦手な生徒も得意な生徒も平等に取り組みやすい課題なのではないかと思います。得意な生徒はどんどん深めればいいですし、苦手な生徒は見やすさやデザイン等、他の点でこだわることができます。それぞれの生徒の学習の進度に合わせて取り組める課題だと思いました。

また、これまでの授業でも簡単にいろいろなメディアのデータを組み合わせて表現できることがコンピュータのいいところだと教えてきていたので、ここでも生活や社会で見かける光景と結びつけて指導できるのはポイントだと思います。

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