インタビュー&コラム

Column

これからの時代を生きる子供たちに
必要な情報活用能力とは 前編

鹿児島大学大学院 教育学研究科 学校教育実践高度化専攻 准教授
山本 朋弘

(2018/06掲載)

新学習指導要領の公示

 情報化や国際化が進み、将来の変化を予測することが困難な時代を生き抜く子供たちにとって、社会の変化に主体的に向き合い自らの可能性を最大限に発揮できる能力の育成が重要である。そのような社会背景を踏まえ、新学習指導要領では、「言語能力・情報活用能力の育成」を学習基盤として、読解力を支える語彙力の強化や、文章を読むプロセスに着目した学習の充実が重要であることを示した。

言語能力の育成のために

 「言語能力」の育成では、文章を読み取るだけでなく、図表やグラフから読み取ったり、解釈・熟考したりすることが重要である。近年では、各方面でコンピュータ等を用いた新たなテスト形式が導入されており、非連続型テキストを読み取り解釈できる能力の育成が求められる。例えば、コンピュータ上で情報を整理して分析したり、データをグラフ化して傾向を見つけたりして、自分の考えの根拠を明確にするように指導することが挙げられる。また、マッピングやチャート等の思考ツールを用いてアイディアを共有したりする場面においてICTを活用するなどして、多様な学習場面において育成していくことが求められる。さらには、授業支援システムやSNS等で協力して作品を制作するなどの発信型授業も「言語能力」の育成に欠かせない。

情報活用能力の育成のために

 「情報活用能力」は、情報や情報技術を効果的に活用して、問題を発見・解決し、自分の考えを形成していくために必要な資質・能力であり、各教科等で身に付ける資質・能力の育成の観点から不可欠な基盤となるものである。とりわけ、小学校では、「プログラミング的思考」等を育むプログラミング教育が導入されることとなった。学校現場では、これからの情報化を踏まえてこのことを前向きに捉え、単なる個別作業やお楽しみに陥らないよう、本来の目的である「情報活用能力の育成」を常に意識することが重要である。

主体的・対話的で深い学びの実現

 これらの言語能力や情報活用能力を育成するにあたって、主体的・対話的で深い学びが極めて重要になってくる。これは、見通しを持って取り組み、自らの学びを振り返ったり、友だちと協力して問題を解決したりするなど、子どもの学び方をどのように育てるか、従来の画一的な学習規律に縛られない指導や支援の在り方が求められる。すべての教育活動の中で、学びの質を重視し、教師が何を教えるかだけでなく、学習者中心の授業を展開しながら、何ができるようになるか、どんな力がついたかを明らかにしていくことが今後求められる。

山本 朋弘 先生

鹿児島大学大学院 教育学研究科 学校教育実践高度化専攻 准教授

【プロフィール】

文部科学省「教育の情報化に関する手引」作成検討会委員など歴任。日本教育工学会、日本教育メディア学会、日本科学教育学会、日本教育心理学会等に所属。小学校教員、熊本県教育庁教育政策課主幹を経て現職。研究分野は、タブレット端末の持ち帰りに関する研究・授業でのICT活用やプログラミング教育・研修や学校経営など、多岐にわたる。

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