インタビュー&コラム

Column

膨大な情報の中から、
質の高い情報を見つけるために 後編

静岡産業大学 特任講師
齋藤 智世

(2016/07掲載)

情報の正しさ、確からしさを見極めるためのリテラシーを持ちたい

 前編では、「質の高い情報」とは、①自分にとって必要であること、役立つこと ②その情報が正しいものであること だとし、①について述べました。後編では、もうひとつの要件「②その情報が正しいものであること」はどうやって見分けたらいいかを述べてみたいと思います。

 自分が発信する情報の正しさや確からしさを高めることも難しいことですが、他人が発信した情報の正しさや確からしさを判断することもとても難しいことです。私たちは、他人が発信した情報に対して、「信憑性」(信用できる度合いのこと)をチェックする必要があるというわけです。信憑性のチェック項目の基本は、発信者、発信日、根拠や引用の出所が明示されているかどうかです。

発信者が誰か明示されているか

 発信者が誰かわかることは、情報の質を見極めることに大きく影響します。発信者が明示されていない情報は信憑性が低いというわけです。

 どのような人か(所属、連絡先、略歴、専門分野などの人物紹介)、個人の発言や感想なのか、組織の代表としての発言なのかなどが評価の対象となります。発信の意図を見抜くための手がかりにもなります。発信者が信用に足る組織や人物だった場合には、発信内容を精読していく価値があると判断できますので、じっくり記事を読んでみましょう。常に発言をチェックしたいような発信者であれば、情報が発信(更新)されたら自分のところにお知らせ(通知)が届くような手段をとっておくと良いですね。

 発信者を特定する、ドメイン制約検索も良い方法です。たとえば文部科学省が発信している情報に限定したければ、「ジグソー法 site:mext.go.jp」を検索キーワードにします。「site:」の後にその組織のドメインを入れれば、URLに「mext.go.jp」が入っているサイト内から検索結果をピックアップしてくれます。

いつの情報か明示されているか

 情報は「新しければ質が高い」と一概には言えません。目的によって、新しいほうが良いかどうか判断は分かれます。ただし、発信日(更新日)や調査日がわからないと、その情報が生産された当時の背景を把握して、その情報を読み解くことができません。ニュースでは、速報記事としばらくたってからの記事では、情報の浅い深いや原因や背景など得る情報が変わってきます。統計では、速報と確報とでは精度が違ってきます。いつの情報かは必ず確認しましょう。いつの情報か明示されていなければ、もちろん信憑性は低くなります。

 検索サイトでは、ページの最終更新日を特定して検索結果を表示させることができます。1年以内とか、1カ月以内とか、日付を明示した期間指定も可能です。情報の絞込みには便利です。

 気になる話題について常に最新の情報をチェックしたいのであれば、Googleアラートも便利です。Myニュースのように、特定の話題についてニュースを勝手に集めてくれるサービスを利用するのも便利です。

根拠や引用の出所が明示されているか

 短文のつぶやきやブログにも、発信者の意図があります。発信された内容に発信者の主張が入っているのであれば、その主張を支える根拠が示されてこそ主張に説得力が出てきます。あなたが見つけた情報に、根拠が明示されているかどうか確認してみましょう。その根拠となるデータや資料が第三者の作成物だった場合、引用の出所や情報源を明示する必要があります。根拠や引用の出所が明示されていなければ、確からしさを評価できませんから、当然信憑性は低くなります。

 資料に記載された参考文献一覧は、効率良く質の高い情報が入手できるところです。見つけた情報をたぐって次の情報に出合い、さらにその参考文献から次の情報を入手する、そんな芋づる式の検索も質の高い情報を見つける手段です。

 引用元となる情報源が、新聞社、国・自治体、研究機関など公共性の高い組織の刊行物・白書、調査結果などであれば、信憑性は高まります。専門書なども信憑性が高くなります。企業や専門家の発信する情報も有効ですが、発信者の意図を見抜く力が必要になります。特に引用されている言葉が短いと、引用元の発信意図が十分に汲み取れないことがあります。引用されている言葉の前後に書かれている内容を確認するためにも、引用の出所に当たることが大事だというわけです。

 「出所が明示されていないけど、どこが情報源だろう?知りたいなあ」ということもありますね。そんな時は、フレーズ検索が便利です。検索サイトで「‚対話を通して自分の知識を育て続けるスキル”」という文章をそのままキーワードとしても、助詞で分割されたり節のまとまりで分割されたりして、文章のまとまりで記載されているWebページを検索結果としてピックアップしてくれません。そんな時は、フレーズの前後をダブルクォーテーション「"」でくくって、「"対話を通して自分の知識を育て続けるスキル"」をキーワードとします。そうすれば、連続する文やフレーズが掲載されているページのみをピックアップしてくれます。引用元を探すときに使えるテクニックです。

 信憑性のチェック(発信者、発信日、根拠や引用の出所の明示)以外にも、質の高い情報かどうかを評価するポイントがあります。

一次情報か二次情報か見極める

 情報には加工のレベルによる種類分けがあります。著作者(発信者)が初めて公開するオリジナルな情報である一次情報と、一次情報を元に第3者が作成した二次情報です。辞書では、一次情報を「実態調査・アンケート調査・実験などにより直接集めた情報。図書情報では、論文や資料集など研究活動から生み出されたそのままの情報」、二次情報を「一次情報を検索や流通に便利なように要約・整理・加工・再編成した情報」*1 としています。

 発信者が見た、会った、聞いた、調べた、直接知っている、考察した事実であるという一次情報に比べ、第三者が生み出した一次情報に手を加えた二次情報は、直接経験していないというだけでなく発信者の意図や主張が混じってきます。元の情報の一部が抜けたり変質したりして、一次情報の発信者の意図が伝わらないこともあります。二次情報は一次情報に比べて信憑性が低くなることがあるのです。一次情報か二次情報か見極めて、二次情報の場合はその情報源である一次情報にも当たってみましょう。情報源が分からない二次情報は、鵜呑みにしないように。

発信の意図を見極め、複数の情報を比較する

 新聞やテレビ局などのマスコミは、ニュース報道などで一次情報になることもありますが、発信者の意図が記事の編集などに影響を与えています。スポンサーの意向などが影響を与える場合も...。同じ発信者であっても、事件などが起きた直後の速報記事と、しばらく経ってからの補充記事では、当然違いが出てきます。

 アンケート調査や統計などは、調査日だけでなく、全数調査か標本調査か、母数の大きさや対象、調査方法などをチェックしましょう。分析結果の判断に影響を与えます。

 メリットばかりでデメリットが書いてないとか、一方的な主張だけになっているなど、内容に偏りが生じることがあります。意図的に情報を欠落したりゆがめたりしている場合もあります。商品の批評や評価記事などで、ステルスマーケティングが話題になったこともありましたね。そのような情報操作が無いかどうかを見極める眼を持って、情報を評価したいものです。

 大学生に求められる情報リテラシーに「ひとつの事柄に対し、複数の情報源で確認することができる」*2 があります。中学生に身に付けさせたい情報活用能力にも「様々な情報源から収集した情報を比較し必要とする情報や信頼できる情報を選び取る」*3 があります。人権教育でも公平で均衡のとれた結論に到達するために、複数の情報源から情報を収集・吟味・分析する技能が求められます*4 。同じテーマについて複数の情報を比較して検討することを忘れないようにしたいものです。各社の新聞記事もTwitterも動画も一覧で比較できる「NAVERまとめ」、複数の辞書や事典の内容が一度に比較できる「コトバンク」などは便利です。ただし、まとめサイトやニュースアプリなどは、コンテンツの一部を表示しているだけです。ニュースアプリのような短文記事では、5W1Hが含まれていない場合も。要約記事だけで判断せずに、一次情報までさかのぼって確認しましょう。

 いずれにしても、入手した情報は、批判的思考(クリティカルシンキング)で内容をじっくり吟味し、情報の真偽や価値を自分の頭で考えて、取捨選択の判断をしたいものです。

*1 岩波書店「広辞苑(第六版)」(2008年)
*2 国立大学図書館協会教育学習支援検討特別委員会「高等教育のための情報リテラシー基準2015年版」p.15(2015年)
*3 文部科学省「教育の情報化に関する手引」 p.75(2010年)
*4 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]指導等の在り方編(2008年)
齋藤 智世 先生

静岡産業大学・特任講師

【プロフィール】

小学校教員、教育ソフト開発メーカー勤務を経て、2006年4月より静岡産業大学で非常勤講師。2010年4月より現職

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