自分の作った野菜をおいしく食べて感謝の心を育てよう。
作物が収穫の時期を迎えるころには、作物は子どもたちにとって、ペットのような存在となっています。自分と同じように成長する様子を観察することで、野菜にも命があることを体験すると、子どもたちは野菜が愛おしくて食べられなくなります。その野菜を食べることで初めて野菜の命をいただく「いただきます」「いただきました」の気持ちを持つことができます。自分で収穫して、調理する体験を最終目的として、栽培をさせるのです。この体験を通して、食べ物に感謝をして食べること、自分以外の生き物の命をいただいて、自分の命をつないでいる、生かされているという気持ちを芽生えさせたいと考えます。
また、自分の手で種から育てた野菜を食べる体験は、生産者の苦労を知ることにもなり、生産者への感謝の気持ちや食べ物を粗末にしない気持ちも自然と育ってくると考えます。
自分の手で育てた野菜(豆苗)を調理する。
完成した料理がこちら。様々な豆苗料理が並ぶ。
自分たちの手で育てた野菜をいただく。最後にはレシピとしてまとめる。
食という字は、人を良くすると書く。健康を考えよう。
中学生が考えた豆苗を使った料理。
豆苗とブロッコリーのあえ物
スクランブルエッグと豆苗サンド
豆苗入りスープ
栽培と食を結び付けた体験をさせることは大切です。人は食べる物でできていることを実感させ、健康について考える機会にもなればよいと思います。そのためにはやはり、作物を自分で種から作る体験は、安全で美味しいものができる過程を体感できるという点で、重要な意味をもつと考えます。また、種から品種を選ぶことで、スーパーではあまり売られていない、栄養バランスがよく育てやすい品種にこだわって作ることができることも利点です。例えば、ワサビ菜、ミニチンゲン菜、ミニトマト(ミニキャロル)、キュウリ(夏すずみ)などが育てやすいです。
さらに、野菜には機能野菜としての食べ方があるということもポイントです。機能野菜とは、本来は全く含まれない、もしくは微量にしか含まれない成分を、何らかの技術を用いて高含有にした野菜のことです。少量でも栄養価が高くなっています。例えば、ブロッコリースプラウトのスルフォラファンは抗酸化作用やがん予防効果が期待されます。トマトならリコピン、ピーマンならカロテン、赤カラシナならアントシアニンといったような栄養価が含まれます。こういった野菜があることも栽培と食を結びつける題材として、知っていただきたいと思います。
それから、発芽後すぐの野菜は栄養価が高いことが多いです。作物は発芽後の1、2週間がこれから育とうとする栄養を蓄えている時期になります。その時にしかつくられない栄養素もありますので、これまでタブーとされてきましたが、発芽後すぐの野菜をたべることも栄養を摂る方法の一つです。
野菜は生きています。採りたての一番美味しい時に食べてあげることが大切です。
誰でも何処でも簡単にできる栽培方法やその食べ方についてご紹介。栽培活動・食育全体をコーディネートできる人材の育成に重点を置きます。
主催・協力団体 募集
お問い合わせ先(竹村先生)
takemura-hisao@ka.tnc.ne.jp
浜松市立天竜中学校・教諭
【プロフィール】
静岡大学教育学部卒業後、磐田市にて小学校教諭、浜松市中学校技術科教諭、静岡県立農業経営高等学校農業科教諭を歴任。平成19年より、静岡県立浜松視覚特別支援学校教諭。
その間、食育に関する執筆活動を行うとともに、市民園芸活動の指導等で全国で年間30回以上の実技研修会を行う。
静岡県・浜松市技術科研究会、日本農業教育学会、日本農業検定特任講師。
主な著書に『図解 おもしろ 子ども菜園(農文協)』などがある。