インタビュー&コラム

Column

河西由美子先生

玉川大学
通信教育部 教育学部
准教授 博士(学際情報学)

学習活動に貢献する学校図書館を目指して 前編

玉川大学 通信教育部教育学部
  准教授 博士(学際情報学)
河西 由美子

(2014/01掲載)

学校図書館の今日的な課題

 今日、世界の学校図書館では、メディア・情報のリテラシー教育に支えられた探究型の学習と、それを支える学習環境としての ICT(Information and Communicaton Technology)の導入が大きなテーマとなっています。それは先進国に留まらず、今夏、国際学校図書館協会 (IASL) の会議が開催されたインドネシアの学校でも、教室や図書館には、プロジェクタや電子黒板が配置されていました。
 第二次大戦後、視聴覚教育の普及が学校図書館にも及びました。米国の学校図書館では、メディア教育と図書館教育の融合が、学校図書館のメディアセンター化や、「学校図書館メディアスペシャリスト」という人材制度の確立という形で成立しました。英国では、1970 年代までに、地域ごとに学校図書館を支援する「学校図書館サービス」が、CAI(Computer Assisted Instruction)を支援する「教育工学センター」等と並んで設立されました。

教育の情報化

 日本では、戦後米国の強い影響下で始まった学校図書館制度は、1953年の学校図書館法成立など一定の成果をみたものの、直後の国内政治体制の硬直化などもあり、教育政策の主流から離れて形骸化してしまった経緯があります。
 そんな中で、実は2000年前後に、学校図書館と情報教育が接点を持つ可能性がありました。それは、高等学校の新しい「教科・情報」の設置に先駆けて、情報教育の有識者会議が、学校図書館を校内の「学習情報メディアセンター」と位置付け、司書教諭を「メディア専門家」とモデル化したことです 。
 このことは、日本の学校図書館にとって新たな展開の可能性を開くものと期待されましたが、残念ながら学校図書館界からは目立った反応がなく、日本の学校図書館の ICTの導入についての関心は今日においても極めて低調であると言わざるを得ません。

読解力や21世紀型学力の育成のために

 一方で、2000年の子ども読書年を皮切りに、過去10年余りの国・地域ぐるみの子ども読書推進の動きは大きいもので、ここ数年を見ても、年間1000億円以上の国家予算が、学校図書館を通じた読書・学習活動の支援のために投入されています。2003年のOECDの国際学習到達度調査(PISA)における日本の子どもたちの読解力の低迷(いわゆるPISAショック)も学校図書館にとっては追い風になりました。その後の全国学力調査の分析から、文部科学省も、読書や計画的な学校図書館活用が、特に成績の低層集団にも学力向上の効果をもたらしていることに注目し始めたのです。
 しかしここで定義されている「読解力」は、伝統的な教養としての文学の読解や、国語科における「文学作品の読解」とは異なる点に注意が必要です。いわゆる「PISA型読解力」は、グラフや写真などの視覚情報、統計データ、科学情報などの読解をも含みます。そのために、文学作品以外にも、科学雑誌や新聞、インターネット上の情報源などの多様な情報源を擁する、学習情報センターとしての学校図書館の真価が問われることになるのです。1953年に成立した学校図書館法第2条では「学校の教育課程の展開に寄与する」ために、「学校教育に必要な資料」を収集・整理・保存し、「これを児童又は生徒及び教員の利用に供する」ことを、「児童又は生徒の健全な教養を育成する」ことに先んじて定めています。日本の学校図書館は、これまで「教養を育む」側面が注目されがちでしたが、学校図書館法成立から60年が経過してようやくその本来的な機能が見直されたということになります。
 筆者が開発に関わった学校図書館利用教育用提示ソフト「まかせて!学校図書館」では、学びに寄与する学校図書館像を強く意識し、学校図書館を使い慣れない一般の先生方にも、指導の助っ人として気軽に使っていただける教材を目指しました。次回は、同教材開発の背景となった、学校図書館での調べ学習(探究学習)の課題や、探究学習の北米の先進モデルについて紹介したいと思います。

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2013年9月28日、東京大学大学院情報学環福武ホールにて「学校図書館情報化セミナー デジタル教材活用編」が開催されました。
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監修:河西由美子/玉川大学通信教育部教育学部 准教授 博士(学際情報学)
    堀田龍也/玉川大学教職大学院 教授 博士(工学)

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