“校務の情報化”推進リポート

Interview

学校発 「校務の情報化」事例
『名簿』をきっかけに、
情報化のメリットが段階的に浸透。
今年度は『通知表作成』まで発展。

熊本県 人吉市立西瀬小学校
井野木 修 校長先生(写真右)
池田 幸彦 先生
(写真左)

(2009/08掲載)

スズキ校務シリーズ活用校インタビュー

人吉市立西瀬小学校では、昨年平成20年度より学校経営改善への取り組みの1つとして、“校務の情報化”に取り組み始めた。先生方の負担の大きい校務処理をまず名簿情報から、出欠席情報、成績処理と段階的に情報化・効率化し、今年度1学期からはそれらの情報を活用して通知表を学校で印刷出力するまでに至った。学校全体でこの取り組みをどのよう推進してきたのか、井野木修校長先生、池田幸彦先生にお話を伺った。
また、同校の取り組みに対し、アドバイスを行ってこられた熊本県立教育センター指導主事 山本朋弘先生にも推進のポイントについてお話を伺った。


人吉市立西瀬小学校

 


井野木 修  校長先生

 


池田 幸彦  先生

 


校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉は、「先生方の校務に関する負担を減らすこと」を第一に考えたソフトウェアです。「校務にばかり時間を取られてしまい、子どもたちとの時間が取れない…」、「教材作成に充てる時間が無い」といった校務に関する悩みを解消するお手伝いを致します。
現在スズキ校務シリーズには6種類のソフトウェアをご用意しています。学校や先生が本当に必要としているソフトウェアを選択し、1種類のみ購入いただくこともできますので、大変経済的です。

 


クリアファイルに入った新しい通知表は、保護者からも好評いただいた。もちろん、子どもたちからも。

 


西瀬小学校では、〈スズキ校務シリーズ〉を活用した校務の情報化の取り組みが定着し、発展しつつある。

 

 

───“校務の情報化・効率化”の推進を目指し、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉が導入され、今日に至るまでの経緯についてお話いただきたいと思います。

井野木校長/私が平成20年度に本校に着任した際、すでに教科の中ではコンピュータが活用されていました。しかし、私自身、教科以外の場面で、もっと効果的なコンピュータの活用が図れないだろうかと考えていました。
 その一方で、熊本県教育委員会からは、勤務時間の縮減がテーマとして掲げられていたのです。また、周辺の学校の校長先生どうしで、「校務の情報化・効率化」について話す機会もあり、時代の動きを感じていました。そして、この機会を是非有効に活かしていきたいという想いで、コンピュータを活用した「校務の情報化」に取り組みはじめたのです。

 

───校務の情報化には、実務を執り行う先生が必要であると言われていますが、池田先生がその役割を担ってきたということでしょうか?

池田先生/最初から確信を持って推進してきたわけでは決してありません。不安なことばかりの中でスタートしたのですが、もし、これが実際に活用されるようになったらどんなに素晴らしいだろう、ということをいつも想像していました。そうした将来像を楽しみに描くことができ、取り組む際の励みになりましたね。
 そもそも、当初は成績処理をパソコンで行うことが目的でした。しかし、熊本県教育センターの山本朋弘指導主事と対話を重ねていくうちに、「まずは『名簿』の活用が大切」ということを感じはじめました。このアドバイスによって、じっくりとあせらずに「校務の情報化」を推進するきっかけができたのだと、今、振り返ることができます。

 

───それでは、昨年から今日まで、時系列に沿って運用の形態を教えていただけますか。

池田先生/平成20年4月に校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉が導入され、まず『名簿情報管理』を活用しはじめたわけですが、実はその前にひとつの戦略を描きました。
 「導入しました。みなさん、さあ校内研修です!」という呼びかけは行いませんでした。これでは、またひとつ職員室での仕事が増えてしまう、というイメージが先行します。
 そこで、「これ便利ですよ。使ってみますか?」というように、少しずつ周囲の先生を誘い、柔らかくファンを創っていこうと試みました。そして、その流れが校内全体に広がるのを待ちました。
 『成績処理』『出欠席情報管理』に関しては、私自身は1学期から活用していましたが、それを少しずつ紹介してくうちに、2学期には多くの先生が活用するようになりました。
 そして年度末になり、新学期のクラス編成にともなって、さらに『名簿情報管理』の恩恵を受けることになったのです。「新しく名簿を作成しなくても済むんですね」と。
 こうして校務の効率化の準備は整い、いよいよ今年度1学期から『通知表作成』の運用をスタートしようと試みました。

 

───しっかりとしたステップがあって、はじめて『通知表作成』が実現したということでしょうか。

池田先生/校長先生は、常に前向きで積極的な考えをお持ちです。了解をいただいたことで弾みとなりました。
井野木校長/良いと思うことは、できるだけ推し進めたいと思っています。私にできることは「号令」だけですからね(笑)。
 その際、池田先生に依頼したことは、実際に活用している学校を全国から探し出して前例を紹介してほしい、と告げました。それによって、説得力が増すと考えました。
池田先生/そして見つけたのが埼玉県深谷市の事例です。資料をいただき内容をお聞きする中で、運用が確実に行われているという安心感を抱き、それが大きな推進力になりました。

 

───この1学期、新しい形式の『通知表』を子どもたちに手渡して、どのような感想をお持ちになりましたか。

井野木校長/何度も見本をつくり、試行錯誤・改良を重ねて完成したのが今回の『通知表』です。
 私や他の先生方の要望をすぐに取り入れて反映してくれた池田先生の対応力がこの成果に結びついたと感じています。
 そして、新しい通知表は、クリアファイルに綴じた形になり、表紙に校舎のカラー写真を載せるなど、あえてイメージを新しくしました。保護者の方から「パソコンの通知表で先生達だけ楽になってよかったね」と言われないように(笑)ではないですが、単なる効率化だけでなく、よりよい形で手にとっていただく為の思いを込めています。校務の情報化を進めていくにあたり、地域・保護者のみなさんの目に映る、手にとって分かる実感として、こうした取り組みの有用性をアピールすることも必要だと思っています。

池田先生/新しい『通知表』を受け取った保護者からは、「カラー印刷や活字表記で見やすくなった」「クリアファイルに入っているので保存しやすい」などの声がありました。
 先生方からは、成績処理の結果をそのまま活用できる点や所見、成績などにすぐに修正を加えることができる点に便利さを感じている様子でした。また、これまでよりも短時間で『通知表』の作成が完了し、その分、授業準備や子どもたちとのふれあいの時間に充てることができたようです。先生方もひとつ山を乗り越えたような安堵感と達成感の中で、大きな手応えを感じているのではないでしょうか。

 

───校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の導入によって、校務の効率化がスタートしたわけですが、この先、どのような学校像あるいは先生方の姿をイメージしていますか。

池田先生/『名簿情報管理』によって、最も事務的な部分でコンピュータ活用のメリットを実感できるようになりました。次に『成績処理』『出欠席情報管理』の活用を促進して職員室に根付かせる働きかけができたように思います。
 さらに、今年度の『通知表作成』の運用で、学校内における「校務の情報化」の全体像がイメージされたのではないでしょうか。
 1年後、あるいは2年後に職員室の先生全員が気軽に〈スズキ校務シリーズ〉を使って校務に取り組んでいたらステキだなぁ、と思っています。そして、本校だけでなく、周辺の学校にもその動きが広がっていたら、尚うれしいですね。
井野木校長/「校務の情報化」の真の目的は、時間を確保して子どもたちとのふれあいの時間をつくることにあります。そのためにコンピュータを活用して校務をできるだけ軽減する。つまり、それは先生の多忙感を解消することです。
 今、振り返って思うことは、「自分が迷ったら何も前に進まない」ということです。「まずやってみる」という姿勢があったからこそ、ここまで到達できたように感じます。
 この先は、私が転出しても、また、職員室の先生方が入れ替わっても継続して運用し、効率化及びその先の効果を高めるシステムであってほしいと願っています。そして、実務を推進できる新しいリーダー役を常に育て続けることが、学校にとって大切になるでしょう。

───本日は、大変ありがとうございました。

 


熊本県立教育センター 
情報教育研修部 教育工学室
指導主事
山本朋弘 先生

 

 

校長先生の校務に対する想いや効率化へのイメージが学校の仕組みを進展させるきっかけになるのです。 

熊本県立教育センター 指導主事 山本朋弘先生

───校務の情報化の取り組みに関して、これまでに学校に対してアドバイスされてきたと伺っています。これまで見かける事例では、トップダウン的に校務ソフトが導入されるケースが多かったと思うのですが、実際にはどのような考え方をお持ちだったのでしょうか?

山本先生/教育委員会などが主導となって、地域全校での校務ソフトの運用を目指す場合、一斉にまた同時に運用がはじまることになり、地域や保護者からも理解を得られやすいというメリットがありますね。
また、ICTの導入をはじめとする教育の情報化においては、コンピュータに詳しい先生が先行的に取り組んでいたケースもあります。しかし、校務の情報化は、学校全体として取り組まなければいけない『新しい仕組み』づくりであると感じています。
そのためには、学校の先生全員が協力・参加してその『新しい仕組み』を活用していかなければいけません。その場合、それを推進する役割として、最も重要な存在が校長先生にあたります。そして、校長先生の方針に沿って実務を行う「推進リーダー」の先生が必要になってくるのです。

 

───推進リーダーの役割は極めて重要になるわけですね。

山本先生/そうですね。例えば、ひとつの要望があったとして、それに瞬時に応えられるだけの対応力を備えていることが重要です。校務ソフトで全児童の名簿を作成したところ、ある先生から、「町内別 の名簿をつくれませんか」という要望が出たとします。
その時に、同じデータを活用して簡単に「町内別名簿」の一覧を作成できると『便利だ!』という実感が沸くのです。それによって、加速度的に理解や共感を呼び、積極的な活用が促進されていくことになると思います。

 

───じわじわと浸透させていくイメージで導入を考えた場合、校務の情報化で一番に実感できるのはどのような機能なのでしょうか。

山本先生/まずは、安全で信頼性できる名簿情報の一元管理ですね。小学校では、顔写真付きの名簿があると便利であったりします。これは、担任の先生だけでなく、校長先生にとっても大変うれしい機能でしょう。町内別や係り別の名簿など、便利感覚を少しずつ増やしていくことで次第に多くの先生に活用が広がっていくと思います。そして、効率化ということを実感していくことになるのです。そして、個人情報の管理が安全であることも重要で、先生方が安心して利用できるシステムが必要だと思います。

───本日は、ありがとうございました。

スズキ教育ソフト