現代的な学校保健活動への対応が急がれている
───林先生は、養護教諭として長年にわたって学校保健活動の現場にいたわけですが、現在はどのような活動をされているのですか?
林 /約40年間、養護教諭として学校保健活動に取り組んできました。その経験を生かして、養護教諭の養成や現職養護教諭のアドバイザ-として活動しています。
───現代的な学校保健活動への移行に、養護の先生の対応が急がれているということになるのでしょうか?
林 /効率化は現代的な学校保健活動を推進するためのひとつの流れですが、現在、重要視されているのは、個に焦点を当てることです。一人一人健康状態が異なり、問題も違うということです。集団指導であっても個を踏まえた指導が必要です。
う歯(虫歯)を例に挙げてみた時、その原因が歯磨きを怠ってることにあるのか、あるいは磨き方に問題があるのか、それとも食生活の問題なのだろうかということを探っていくと、個の課題は子どもそれぞれによって異なることに気付きます。自分が解決しなければならない問題を捉え、課題解決のために「私は、こんなふうに取り組みます」と決め、具体的な方法を考え、行動化させる指導が求められています。
したがって、集団指導の中でも個人に配慮した指導をしていくことが、重要なのです。
───弊社では、学校保健総合管理〈えがお3〉を発売しています。これは、随分以前から多くの養護の先生に活用されています。健康相談活動画面昨今、児童・生徒の心のケアが重要視されるようになってきています。その活動の1つである健康相談活動をサポートする機能を追加しました。
林 /〈えがお3〉は、養護教諭の声を聞きながら開発されただけあり、とても便利な保健管理ソフトです。パソコンによるデータ処理の効率化はもちろんですが、個々のデータを集団として処理するだけでなく、集計データをさまざまな学校保健活動に生すことができます。特に、個別指導に生かせるということから、私も大いに活用してきました。
さらに現在のバージョンは、現代的な健康課題への対応が盛り込まれたことにより、活用機会が増えたと言えます。例えば、アレルギーの問題なども検診結果の中に細かく入力でき、一覧として表示できるため、校内での共通理解に役立ちます。
また、「心の問題」に関しても、個人の様子・状態を記録することによって、訴えている子の背景何があるかを判断する材料にもなり、子どもの心と体に対応する養護教諭にとって対応・支援計画を立てる際に便利で健康相談活動に生かすことができます。
健康な心と身体が学習意欲を喚起させる
───さらに、学校・養護の先生方が積極的な健康教育活動を行っていくにあたり、計画に沿って、または必要なタイミングに応じて、指導に適した教材を準備する必要があるかと思います。
林 /これまでビデオやDVDなどの視聴覚教材は、健康教育の場で提示教材としてよく使われてきました。このような教材は、とてもよくできているのです。しかし、学校現場では、最初から完成された教材が必ずしもよい教材とは言い難い傾向にあります。
教えようとする基本的な内容は、どの学校でもほぼ同じですが、学校の特色や学校規模、学校が抱える健康課題などの実態には差が見られます。学校や児童の実態を踏まえた健康教育和行うには、各学校のオリジナリティを少し加えることより、よりよい教材になると考えます。これは、「根拠に基づいた健康教育」につながるのです。
学校の実情に合った保健指導教材を簡単に作ることができる、プレゼン提示用の新しい教材ソフトです。
授業(道徳や学級活動)、保健集会、生徒集会、学校保健会(保護者向け)、掲示物などで活用できます。
●各製品数ストーリーを収録
●ストーリーは5分~7分程度
●学校独自のデータをストーリーに反映可能
●プレゼンに便利なシナリオ付き
●指導に役立つワークシート付き
まかせて!健康教育シリーズをご利用いただいた先生方の声
「かぜ・インフルエンザ編」を使って授業参観で保健指導を行いました。親しみやすいイラストや吹き出しで、症状や予防の内容が盛り込まれていたために、子どもも保護者も興味をもって学ぶことができました。
毎回、発育測定の前にミニ保健指導を行っています。簡単な実験や紙芝居などを活用して行っていますが、今回は「まかせて!健康教育」を使い、発達段階に応じたアレンジを加えて視覚に訴える保健指導を実施しました。
───この度、弊社では保健指導用提示ソフト〈まかせて!健康教育〉シリーズを発売しました。この〈まかせて!健康教育〉の開発にあたっては、林先生に監修をお願いいたしました。監修にあたって考慮された点などはありますか?
林 /視聴覚教材と比較していただくとその特徴がよくわかると思います。視聴覚教材は、通常20分程度の映像ですが、これは、導入、展開、まとめという構成が一般的です。したがって、提示するためには、適した時間の確保が必要となります。小学校45分、中学校50分の授業時間の中で、20分をとられてしまうと、子ども達に考えさせたり、実習したりする時間が確保できなくなってしまいます。この点では、「まかせて!健康教育」は、5分でも10分でも、与えられた時間の都合に調整が可能です。つまり、使い手の考えにより子どもの実態や指導方針に合わせて活用できるのです。
───時間の制約から開放されるということは、提示できる場面が限定されないということですね。
林 /そうですね。保健室の中でも個別の保健指導に活用できまし、集団の保健指導でも活用できます。その他では、各教科での活用にも柔軟に対応できます。保健体育はもちろん、総合的な学習の時間や道徳、特別活動や保護者会、保健委員会の活動など、実に様々な場面での活用が期待できます。
シリーズ第一弾として発売している『生活習慣編』は、家庭科「食事の役割、大切さ」で、また、低学年の道徳の「自分自身に関すること」で、さらには、入学説明会における説明でも活用することができます。
健康診断や身体測定時におけるミニ保健指導の機会にも活用できます。
また、先生だけでなく、子どもの保健委員会活動などの場面では、児童集会・生徒集会での発表時に「まかせて!健康教育」で活用できます。
学校教育のあらゆる場面での健康教育に活用が可能です。
───子どもたちが活用する場面などは特に新しい機会ですね。
林 /これは、「まかせて!健康教育」がこれまでの視聴覚教材のようにただ視聴するだけでなく、各学校の実状に合わせて調整を加えることができる機能を備えているからです。つまり、テーマ・シナリオはできている。それに各学校で独自のナレーションを準備することができるのです。各学校の先生や子どもたちが自分の言葉で話せば、現実味が増し、みんなが自分の問題として受け止めるようになると思います。
もちろん、そのままでも活用できますが、学校現場で手が加わってはじめてホントに完成する教材、それが「まかせて!健康教育」です。
───その他に具体的なアイデアが何か盛り込まれていますか?
林 /今回、監修するにあたっては、推進メンバーの先生方と協力して、まず原案を仕上げました。それを開発側の構想とダイレクトにつき合わせ、教材として提供できるスタイルに仕上げていきました。最終的なチェックを経て完成した今回の教材は、現場の養護教諭の『こういうことを教えたい』という想いと、しっかりと内容を伝える為の工夫やノウハウ・アイデアが詰まったものです。
例えば、コンテンツの工夫として、あるストーリーの中にオリジナルの歌「手洗いの歌」をつくって組み込みました。子どもは歌が大好きです。きっと楽しみながら大きな声で歌ってくれることを期待しています。その他、各ストーリーに対応したワークシートやアンケートなど学習を促進・発展させるアイデアをたくさん盛り込むようにしました。
───充実した内容になっているということですね。
林 /見せ方にも工夫を凝らした部分があります。例えば風邪のウイルスが湿度との関係で増減するという場面では、簡易アニメーションを使って教室内のウイルスの増殖の様子を描いて危険度を示しました。窓を開けることでウイルスの繁殖を抑制することを解説してあります。これなどは、「定期的に窓を開けましょう」と説明しただけでは子どもたちに届きにくいのですが、アニメーションによって提示することで理解が促されるなど、より効果的になると考えています。
───なるほど、確かに今まで漠然としていたことが、この手法によれば一目でわかりますね。
林 /見る側が一目でわかるように工夫されているのと同様に、使う側も誰でも簡単に操作できるように配慮されています。
ソフトはCD-ROMからの直接起動になります。つまりインストールや面倒な設定などの手間も省け、パソコンとこのCD-ROM、プロジェクタ等があればいつでもどこでも気軽に扱うことができます。また、興味を持った人がわずかな費用で保健活動に役立てられるように、安価な価格で提供していただくように助言しました。順次シリーズの発売を予定し、現在も編集を進めているところです。
───是非、素晴らしいアイデアをカタチにしていきたいものです。最後に、林先生が考える「健康」とは?
林 /健康はあらゆる活動の基盤になるものです。その基盤づくりを小学校・中学校でしっかり教育していくという考えが大事であると思います。健康教育を学校教育の中に盛り込んでいくために、まずは「なぜ、健康教育を推進しなければいけないのか」という根拠を示することが必要です。
これからは、学校保健をコーディネートできる能力を備えた養護教諭の存在が不可欠となるでしょう。一方で養護教諭の特性を生かして子ども達に直接健康教育を行うことも重要であると考えます。その足がかりとして「まかせて!健康教育」の活用によって、すぐに取り組めることができるのです。健康教育を実践する機会を捉えて、積極的に努力する姿勢が、今後の養護教諭には、なにより必要になってくるでしょう。
今、子ども達には、不登校、いじめ、薬物乱用、性の逸脱行動、生活習慣病の兆候、アレルギ-等々、心身の健康問題ふりかかっています。学校全体として心身の健康増進に取り組まなければなりません。健康教育の実践には、家庭や地域社会との連携も重要視されています。生涯にわたっての健康づくりのできる子どもを育成するために、学校教育において健康づくりの基礎基本を身につけさせることが重要であると考えます。