―――先生が、香川県教育センターに在籍していた当時、中学校技術の先生を対象として行ったアンケートでは、大変顕著な数字が結果としてあらわれたとのことですが、技術・家庭科 (技術分野)における「プログラム学習」の現状をどのようにとらえればよいのでしょうか?
川原 香川県教育センターにいた当時、県内38校の中学校技術教員を対象に『プログラム学習における教員の意識調査』というアンケートを実施しました。
その中で、選択的に履修させる発展学習である「コンピュータを活用したマルチメディアの活用」と「プログラムと計測・制御」のどちらを実施しているか、という問いに対して、前者は92%、後者は24%という実に対照的な数字が出ました。「コンピュータを活用したマルチメディアの活用」が広く実施されている背景には、デジタル機器やインターネットの普及など、社会変化への対応がその理由として考えられます。
また、「プログラムと計測・制御」の授業を実施している教員に、何時間実施しているのかを質問したところ、44%が5時間未満と回答し、時間数が非常に限られていることがわかりました。
さらに、「プログラムと計測・制御」の授業を行っていない教員に、その理由を聞いたところ、時間数や適当な教材の不足などが挙げられました。そして、今後、「プログラムと計測・制御」を行う予定があるか、という質問に対しては、「予定がない」という回答が58%を占めました。
しかし、適当な教材があり、時間数が確保できれば「実施したい」と回答した教員も42%あり、実施に前向きな
意欲は持っていただいていることがわかりました。
―――川原先生ご自身は、「プログラム学習」をどのようにとらえているのでしょうか?
川原 Windows全盛の今、パソコンを扱う際、あえて
1からの「プログラム学習」は必要ないのでは?という声を耳にすることもあります。
しかし、「プログラム学習」とは、考えなければ答えがでない学習であって、つまり、学習したことを確実に結果へと結びつけることができるものなのです。学習の中で必ず「なぜ?」という疑問が生徒に起こり、それをひとつひとつクリアすることによって次のステップに進むことができます。
つまり、「プログラム学習」は、コンピュータの論理性を理解し、その上で自分のアイディアをコンピュータの論理にしたがって実現できようにすることを通して、論理的な思考を育てることがねらいなのです。
決してプログラム言語の習得だけを目的とするような狭い意味での学習ではないのです。
このことは、技術・家庭科の本来の目的である『創造性を伸ばす』ことにつながります。
プログラミング入門ソフト
ドラッグ&ドロップのマウス操作でプログラムを作成することができます。また、流れ図とロボットの動きを同時に画面に表示することで、試行錯誤を助け、プログラミングの理解を深めます。
詳しくは製品情報ページをご覧ください
―――アンケートの中で、「適当な教材がない」という回答がありましたが・・・。
川原 限られた時間数で知識に乏しい生徒にいきなりプログラムを作成させるのは不可能です。
そこで、導入段階として活用できる教材が求められるのですが、それに適した教材を探していた時に、スズキ教育ソフトのプログラミング学習ソフト「ロボチャート」を知りました、これはまさにプログラム学習の導入段階にと求めていた教材のイメージと一致しました。
学習において重要なことは、プログラムの言語を覚えることではなく、プログラム全体について、その流れ、組み立てをイメージ化できることだと思います。
「ロボチャート」には、迷路抜けというプログラムの基礎を段階的に学ぶ学習ステージがあり、処理記号を組み合わせてフローチャートを作成していき、迷路から抜け出すというもので、楽しみながら学習することができます。
―――「プログラムの学習」は基本的に個別学習になると思われますが・・・。
川原 そうですね。授業がはじまって5分後には、みんな黙々と学習に向かうことになります。
ですから、「ロボチャート」の9つの学習ステージは、生徒が自分の進度に合わせて取り組むことができるので効果的です。また、「スペースロボチャート」という発展的な学習もあり、自分だけのロボットをプログラミングできるので生徒の興味・関心をさらに高めることができます。
その一方で、学習理解が遅れている生徒のために、デモンストレーション教材を作成しました。
これは、「ロボチャート」の操作手順をアニメーションで仕上げたもので、実際に自分が操作しているように表示されるため、個別にじっくり学習することができます。香川県教育センターのホームページに掲載されていますので、是非みなさんに活用していただきたいと思います。
―――技術・家庭科の学習に関して、今後、どのような変化があると思われますか?
川原 これほど広範囲に学習内容が変化し、また、これからも時代の変化に対応し続けると思われる教科は他にないと思います。それだけ、文部科学省から学校現場への期待を感じています。
しかし、その一方で、授業時間数の不足は切実です。技術・家庭科の学習を通して、「ものづくり」の大切さを生徒たちに伝えていきたいと思っています。
―――それは、より多くの技術の先生に「プログラム学習」を実施してもらいたいということでもありますね。
川原 「ロボチャート」のように、非常に良くできた教材ソフトも存在します。
私自身が感じたように、教える側がおもしろい、と感じたものは、必ず生徒もおもしろい、と感じるはずです。選択教科での履修でもかまいません。
是非敬遠することなく取り組んでもらいたいと思っています。
技術・家庭科(技術分野)の本来の目的は、創造性を伸ばすことです。失敗することに意味があるのです。失敗を恐れずに繰り返しチャレンジして、自分の理論を整理し直せるのが「プログラム学習」の利点です。生徒たちには、どんどん失敗して、自分なりのやり方を導き出してほしいと願っています。
―――ありがとうございました。