授業実践リポート ICT活用&情報教育

Interview

1学期からはじめる
「1年間の思い出CD-ROM」をプロデュース!

阿部 隆幸
福島県 本宮市立糠沢小学校

※インタビュー取材時:大玉村立大山小学校

(2007/05掲載)

 学校教育現場に関わらず、コンピュータを利用するメリットには、「データの蓄積ができ、再利用可能」という点がある。
 学校でITを活用した実践を行うと、1年間の各教科学習を通じて、成果作品・表現作品はどんどん「蓄積」されていく。
 あらかじめ、3学期の最後に、1年間の子どもたちの作品を1枚のCDにまとめてプレゼントする事を念頭におき、春から各教科学習でのコンピュータを活用した取組みを進めることにより、蓄積されたデータは再び「CDアルバム」としての価値を持つことになる。それは、指導者にとっても、子どもたちにとっても、よい思い出となり、その1年間の活動を振り返ることのできる「ポートフォリオ」となる。

 

―――阿部先生は、「1年間の思い出CD-ROM」づくりを実践されているとのことですが、具体的には、どのような活動なのでしょうか。

阿部 6年生の担任を受け持っていた頃、最後の登校日に子どもひとりに1枚のCDを渡していました。これは、クラスの1年間の学習の成果をまとめたもので、各教科にわたり、子どもたち一人ひとりの作品が閲覧できるようになっています。

 

―――それは、すべて子どもたちが自分の手で作ったものなのですか?

阿部 内容は、大きく分けて3つ。1つは、子ども達が1年間の間に各教科学習で制作していく成果作品。2つめは、音楽の合奏発表や、『卒業までの自分』を語る映像作文といった映像。そして3つめは、学校行事などの画像です。
 子どもたち自身の手によって作るものは、1つめの成果作品。
 2つめの映像での成果作品は、私が子どもたちの成果を撮影します。
 3つめの学校行事は、私が撮影してCDに入れます。
教師としての主な仕事は、このCDのコンテンツを企画・プロデュースすることにあると思います。
あとはCD化に際して、目次を付け、各データのリンクを整えたりといった実作業もありますが、1クラス分であれば、大変な手間でもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――具体的な進め方について教えてください。

阿部 まず、子ども達のデータを蓄積していく事ですが、子ども達がICTを活用して作品データを作ることを前提としますので、〈キューブきっず〉の各機能やホームページの作り方をはじめとする一通りのコンピュータ活用の基本は必要になります。これは各学年に応じたコンピュータ・リテラシー指導計画に関わりますが、本校の場合、ある程度キューブに慣れた高学年の児童であれば操作スキルに関して問題はありません。
 ポイントは、1学期に「これから1年間をかけて、図工や家庭科など、授業の中で作った自分の作品を紹介するページを作成していきましょう。」と伝えることにあるかと思います。これにより、各教科や学期というくくりを超え、1年間を通じて学ぶという姿勢をクラス全体に示します。
 例えば、製作のひとつの流れとしては、図工で絵を描きます。それをデジカメで撮影してパソコンに保存します。次に、その絵を解説する文章を「キューブきっず」のホームページ作成ソフト〈キューブページ〉を使って付け加え、HTML形式で保存します。この手順を繰り返していきます。 図工のような表現作品の他にも、家庭科での調理実習や国語の作文、他教科での調べ学習の成果など、デジタルデータとして記録できるものは、サーバ上のフォルダにすべて蓄積していきます。

 キューブの場合は「ポケット機能」があるのでとても便利です。難しい設定なしに、子ども達自身がサーバ上に成果作品・表現作品を保存し、データが蓄積されていくことになります。

 

 

―――なるほど、集中して作るというよりも、毎日の学校生活の中で作られた作品を貯めていく、という感じですね。

阿部 そうですね。こうすることによって、自分自身のポートフォリオが完成することになります。
 子ども達自身の作品集としてCDに収めるだけでも、とても意味があることだと思います。
 ただ、当然パソコン上の制作物で全ての成果が完結するわけではありません。音楽の合奏発表なども音楽科の中での成果発表ですので、こういったものも是非収めたいものです。
 最近は手軽に動画もデジタルデータとして扱うことができますので、成果発表のイベントも動画で撮影しておきます。

 

―――そして、3学期になってから自分の記念作品に着手するわけですね。

阿部 はい。3学期の「総合的な学習の時間」の活動は、『卒業までの自分』を語る映像作文の作成です。これは、ストーリーテリングの手法を用いて1年間を振り返るもので、様子がわかる画像、その画像に合った音楽、説明する音声(アナウンス)を組み合わせて作ります。
 そして、できあがった作品は、CDとして手渡すと同時に、3学期最後の授業参観で鑑賞会を開き、保護者にも見てもらうようにしています。

 

―――保護者も、学校での子どもの様子とともに、作品にもふれることができるわけですね。

阿部 このようなICTを利用する取組みは、有用な表現・コミュニケーション手段としてのツールのメリットを活かすことが重要だと考えます。それは、子どもたちの作品作りや子どもたちへの指導にICTを活用するだけにとどまりません。
 表現・コミュニケーションは1から10までパソコン内で完結するものでなく、この取組みのように、「宝」である蓄積したデータを利用して、保護者に向け、卒業していく子どもたち自身に向けて、新しい価値を創造できることも、またICTを活用するメリットと考えています。

阿部 隆幸 先生

2007 みちのく情報教育フォーラム事務局担当。
2006年度まで大玉村大山小学校勤務。
2007年度からは本宮市立糠沢小学校(教務主任)。

関連Web

阿部先生のブログ「あべたかRoom」

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