インタビュー&コラム

Column

中学校 技術・家庭科(技術分野) 
ギyジュツどっとコラム
三重大学教育学部 助教授
村松 浩幸


「キューブカート2」を線に沿って走らせる制御を学習

大切にしたい“制御の技術”

(2006/06掲載)

 技術・家庭科技術分野(以下技術科)で「情報とコンピュータ」が必修化されて7年。技術科ではBASICなどのプログラミングの授業から、インターネットの普及と共に、ホームページ作りへ。プレゼンテーションも活用されてきました。他教科でもコンピュータが活用できるようにという要望も強くありました。しかし小学校の情報機器整備も進む中で、技術科が取り組むべき情報の内容について再考の時期に来ています 。
 今回はその中で制御について考えてみます。情報技術の中でも、制御の技術は、社会や生活に与えている影響が大きいと言えます。機械の中はコンピュータだらけです。炊飯器、テレビ、ビデオ、エアコン。自動車もコンピュータがたくさん使われています。制御技術無しでは自動車だって走らせることがないが、ほとんどの生徒は知りません。
 筆者自身も制御ソフト「オートマ君」を開発・実践してきました。その中で最も生徒達が感動の声を上げるのは”実物が動く瞬間”です。CG画面は見慣れている生徒達も、実物が動き出すというのは驚きのようです。しかし2005年度行った無作為の全国調査でも、制御を実践している学校は、残念ながら2割強、プログラミングも3割強に留まっていました。その原因は予算や機器、時間数、また難しさによる敬遠もあります。このような現状ですが、実物が動く感動と社会における制御技術の重要性は大切にしたいものです。
 こうした課題に対応すべく、スズキ教育ソフトでもコストダウンや画面からの転送に苦心した「キューブカート2」を送り出しています。線に沿って動き出すと生徒達の声が上がる。この驚きをさらに技術科の学習として深めたいです。
 生徒達の意欲的な取り組みを大事にしながら、技術科として本来取り組むべき情報はどうあったらよいのでしょうか。次期学習指導要領改訂を前に、多くの先生方と一緒に考えたいと思います。

 

  情報システムが中心の段階に

(2006/10掲載)

 筆者の所にも,最近情報セキュリティに関する研修依頼が増えてきます。こうした情報セキュリティの話は,少し視野を広げたら,情報システムをどのように安全に使うかということにつながります。現代の社会は,様々な情報システムがいたる所に使われていることはいうまでもありません。コンビニのPOSシステムや銀行のオンラインシステムなどは代表格ですが,身の回りの様々な製品も,生産から手元に届くまでに,様々な情報システムに支えられていますし,2000年問題の大騒ぎのように,情報システムが止まったら,今の社会は大パニックに陥るでしょう。
 セキュリティの話も技術の学習として考えてみると,コンピュータウィルスの対処法を教えるだけでなく,社会を支える情報システムという観点から見た展開ができるのではないでしょうか。情報システムを安全に使えることの重要性に気がつき,情報システムを安全に使うためにどんなことをしているのか理解し,体験できたらと思います。例えば,流行のブログなら,情報発信ツールとしてだけでなく,パスワードなどセキュリティや個人情報。さらには情報共有や連携,ネットビジネスなどの経済的な話にも広げていくという展開は考えられないでしょうか。
 こうした方向で,現在の技術の学習で行われているアプリケーションソフトの活用中心の段階から,情報システムの活用,情報システムの仕組み,情報システムの構築といった情報システムが中心の段階に進められないかと考えています。社会の中での情報システムを実践的,体験的に学べたら,子ども達の情報技術のとらえ方が変わるのではないかと期待しています。


創造性を伸ばし、知的財産を尊重する態度を育む

(2007/02掲載)

 コラムの最終回は,知的財産についてとりあげたいと思います。発明の特許や著作権などの知的財産制度が,今の情報化社会の基盤になっていることは言うまでもありません。知的財産の学習は,工夫・創造する能力を育成する技術科の中で,今後重要になってくると考えます。しかし,知的財産といっても特許の専門教育ではありません。中学校段階では,創造性を伸ばし,知的財産を尊重する態度(知財マインド)を育てることが目標です。
 例えば,作品の構想やアイデア説明図を知的財産と考え,共有する。そしてお互いに評価しあい,お互いのアイデアを参考に,より良いものに改良し,お互いのアイデアの良さを認め,尊重し合う。今までの学習に少し知的財産の視点を加えるだけで,体験的な知的財産の学習へ踏み出せます。著作権についても,今までの著作権を守るための学習を大切にしつつも,さらに踏み出して,著作権を生み出し,活用する学習が必要ではないでしょうか。知的財産の重要性は,知的財産を生み出す側に立つことで,より理解が深まります。
 こうした学習の流れを「知の創造」「知の共有」「知の尊重」の3つからなる知的財産の学習サイクルで示しました。ものづくり,情報を問わず,取り入れることが可能です。
 今後の技術科の情報の授業では,制御,情報システムに知的財産も加えた3つの内容を積極的に取り上げ,社会を支える情報技術を理解し,評価でき,活用できる子ども達を育てて欲しいと願っています。

スズキ教育ソフト