インタビュー&コラム

Lead Article

今、段階に応じて利用できるツールが
求められています。

園田学園女子大学 
情報コミュニケーション学科 助教授
原 克彦

(2003/07掲載)

小学校では、低学年の時期からコンピューターに触れるということが始まっています。しかし、その必要性や意義についてはまだ十分に理解されていない面もあります。
そこで小学校低学年でのコンピューター活用について詳しい先生(園田学園女子大学の原先生)に単刀直入にお伺いしました。 

 

―――低学年がコンピュータを使う必要はあるのですか?

 昨年から実施されている指導要領では、各教科や総合的な学習の時間などにおいて、コンピューターや情報通信ネットワークを取り入れた授業を行うことになったことはご存じだと思います。これは、先生がうまく活用して授業をわかりやすくするだけでなく、必要に応じて児童も活用する場面を作ってあげることも含まれています。
小学校の低学年では、コンピューターに「触れ、親しむ」ことに加えて、いろいろな場面で活用することで「慣れることも大切なことだと思います。

 

―――なぜ、「触れ、慣れ、親しむ」必要があるのでしょうか

 情報社会が今後ますます進展することは言うまでもありません。これからの社会で活躍する子どもたちのことを考えると、コンピュータや情報通信ネットワークに慣れ、必要に応じて活用できるようになっておくことが必要であることは明白ですね。
ただ、注意しなくてはならないのは、情報機器を達人のように使いこなすという意味ではなく、それらを使ってうまく情報活用ができる力をつけることが重要なのだということです。そのためにも、情報活用の入り口としてのツールに、触れて、慣れて、親しむことが必要になってきます。遊び的な活動の中で使うのもひとつの方法です。

 

―――昨年6月に文部科学省から提示された『情報教育の実践と学校の情報化(新「情報教育に関する手引き」)』では、「発達段階等への配慮」として、低学年は、「情報機器には、遊び的な活動を通して触れ、親しませる程度を基本とする」とありますが、このことは、情報教育やコンピュータリテラシーの育成といえるのでしょうか。

 子どもたちにとっては「遊び的な活動」であっても、そこに情報教育の観点からみた重要かつ基本的な目的を含ませる必要があります。
例えば、お誕生日のカードを作るような活動を考えた場合、そのカードに何を書いて相手に伝えるのか、どう書けば喜んでもらえるかということなどを考えながら作成することが必要なのです。ただし、低学年では見本を見ながら真似て書いたり、使い方の案内にしたがって作業を進めたりすることで、経験的に身につけるような仕組みを準備しておくことも必要です。そういうことを繰り返しながら、やがては自分で考えて作るという活動につながることになります。

 

―――それでは、低学年ではないけれど、3年生くらいからコンピュータに初めて触れるという場合には、どのようなことに気を配ればよいのでしょう。

 1年生であっても3年生であっても「初めて使う」ということには変わりはありません。でも、1年生と異なり、活動としては、「遊び」でなく、 教科などの学習の中での活用という設定になってくるかもしれません。
しかし、その場合でも使うツールは使いやすく分かりやすいということが求められます。大人であっても、突然難しいソフトウェアを利用して複雑な操作から入ると、コンピュータに対する嫌悪感が生じて使うのが嫌になるのと同じです。

 

―――そうすると、低学年でも使える簡単なソフトウェアが必要ですね。

 昨今、学校で利用するソフトウェアが次々と開発されていますが、どれも高機能です。確かに活用スキルがあがってくると必要になる機能もありますが、最初に触れる子どもたちにとっては難解な操作となることも少なくありません。最初に触れる様々なツールは「触れ、慣れ、親しむ」という視点から考えると、やはり分かりやすく使いやすいということが必要になってきます。
そして、「触れ、慣れ、親しむ」段階を越えると、次は「主体的に活用する」ようになり、いろいろな機能が要求されるようになってくるでしょう。このように段階に応じて利用できるツールが現場では必要だと思います。

 

小学校の低学年でのコンピュータ利用の必要性については、理解いただけたでしょうか。
今後は、「触れ、慣れ、親しむ」段階で基本的な活用能力を身につけ、「主体的に活用する」段階へうまく橋渡しする事が必要だと考えます。
そのためにも、ひとりひとりの児童が、簡単に使えるソフトウェアを楽しんで活用できるような学習場面の工夫をしていかなくてはなりません。

 

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/原克彦

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