情報技術が急激に発展し、今やスマートフォンやタブレットPCといった情報機器は私たちの日常生活に浸透しています。そんな中、平成29年3月に公示された小学校学習指導要領(以下 新学習指導要領)では、「プログラミング教育」が必修化されました。小学校における「プログラミング教育」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
新学習指導要領・新学習指導要領解説では
新学習指導要領や新学習指導要領解説では、下記のとおり記載されています。
新学習指導要領
総則には、各教科等の特質に応じて計画的に実施する学習活動として、次のように記載されています。
児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動
小学校学習指導要領 第1章 総則 第3 教育課程の実施と学習評価
1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善(3) イ
新学習指導要領解説
総則編では、プログラミングに取り組むねらいについて、「プログラミング言語を覚えたり,プログラミングの技能を習得したりといったことではない」とし、下記の3つを挙げています。
- 論理的思考力を育む
- プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育む
- 教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせる
小学校学習指導要領解説 総則編 第3章 教育課程の編成及び実施
第3節 教育課程の実施と学習評価
1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
(3) コンピュータ等や教材・教具の活用,コンピュータの基本的な操作やプログラミングの体験(第1章第3の1の(3)) より抜粋
- 児童がプログラミングを体験し、意図する動きを実現するために試行錯誤することが重要
- プログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得することではない
教科でのプログラミング教育
算数 第5学年
プログラミングを通して正多角形の意味を基に正多角形をかく場面
理科 第6学年
身の回りには電気の性質や働きを利用した道具があること等をプログラミングを通して学習する場面
音楽 第3学年~第6学年
様々なリズム・パターンを組み合わせて音楽をつくることをプログラミングを通して学習する場面
など
ご存じのとおり、必修化といっても「プログラミング」という教科が設けられるわけではありません。前述の新学習指導要領解説(総則編)には、「(各)教科等における学習上の必要性や学習内容と関連付けながら計画的かつ無理なく確実に実施されるものであることに留意する必要があることを踏まえ、小学校においては、教育課程全体を見渡し、プログラミングを実施する単元を位置付けていく学年や教科等を決定する必要がある。」と書かれています。さらに、先生方のプログラミング教育の指導に対する不安を解消するため、平成30年3月、文部科学省から「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」が公開されました。ここでは、学校の教育課程内におけるプログラミング教育のうち、ICTを用いて行う指導例(9例)が紹介されています。中でも、教科での指導例としては、右記等が挙げられています。
総合的な学習の時間でのプログラミング教育
探求課題として「情報」を設定する場合、新学習指導要領や小学校プログラミング教育の手引(第一版)では、下記のとおり記載されています。
新学習指導要領
内容の取扱いについての配慮事項
プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること。
小学校学習指導要領 第5章 総合的な学習の時間
第3 指導計画の作成と内容の取扱い 2(9)
小学校プログラミング教育の手引(第一版)
学習場面
情報技術が私たちの生活を便利にしていることをプログラミングを通して確認するとともに、この体験をよりどころとして、情報に関する探究を進めていきます。
第3章 各教科等の目標・内容を踏まえた指導の考え方
A-③ 「情報」を探究課題に設定した学習場面(総合的な学習の時間)
学習の位置付け
プログラミングの体験をよりどころとして、児童が情報に関する課題を見いだし、探究していくことができるよう、「情報」に関する探究の早い段階に位置付けることが想定されます。
第3章 A-③ 「情報」を探究課題に設定した学習場面
(総合的な学習の時間) (学習の位置付け)
- 情報技術が私たちの生活を便利にしていることをプログラミングを通して確認する
- プログラミングの体験は、「情報」に関する探究の早い段階に位置付ける
プログラミングに関する学習活動の例
「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」では、総合的な学習の時間でのプログラミングに関する学習活動の例が挙げられています。
①生活の中での経験を基に、それを再現するには命令(記号)をどのように組み合わせればよいかを考え、試行錯誤(プログラミング的思考)することで、プログラムの働きを理解し、機械的な仕組みでは難しいことでもコンピュータでは容易であることを実感する
②プログラミング体験を基に自らの生活を振り返り、ライフラインを維持管理するためにもプログラムが働いていたりAI(人工知能)やビッグデータの活用、ロボットの活用によって、私たちの生活がより快適になり効率的になっていることに気付く
③情報技術をどのように活用していけば、私たちの生活がもっと便利になり、危険なく生活できるようになるのかなどを探究する
④「人間らしさとは何か」、「人間にしかできないこととは何か」、「人間としてどのように暮らしていけばいいのだろうか」など、自分の生き方を考え直す
第3章 各教科等の目標・内容を踏まえた指導の考え方 A-③ 「情報」を探究課題に設定した学習場面(総合的な学習の時間) (学習活動とねらい) 参考
参考資料
小学校学習指導要領 文部科学省 (2017)
小学校学習指導要領解説 総則編 文部科学省 (2017)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
小学校プログラミング教育の手引(第一版) 文部科学省 (2018)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm
プログラミング教育の教材・事例をご紹介!
今後、小学校では、教育課程全体を見渡し、どの学年や教科等でプログラミングを実施するか検討されていくことと思います。 まずは、今ある様々な活用事例やプログラミング教育のための教材に触れてみることで、授業のイメージが膨らむかもしれません。
小学校向けプログラミング教材<ぴたっと!プログラミング>のご紹介
小学校向けプログラミング教材<ぴたっと!プログラミング>活用事例
神奈川県相模原市立鹿島台小学校
神奈川県相模原市立橋本小学校
三重県南伊勢町立南勢小学校