授業実践リポート ICT活用&情報教育

情報活用能力を育成する

授業デザインのヒント

2018/03掲載

先生方の授業にさらなる課題「情報活用能力」の育成

 2017年の3月に公示された新学習指導要領には、教育課程を工夫し、教科横断的に「情報活用能力」を育成することが明記されました[第一章 総則 第22 (1)]。これまで以上に「情報活用能力」を意識し、授業を行っていくことが求められる中、現場で指導される先生方に限らず地域の教育を主導する教育委員会・教育センターの先生方なども、どのような授業をしていけばよいかお悩みなのではないでしょうか。そこでご紹介するのが、研修セット<研修パッケージ>。先生方の困り感を「研修」の面からサポートいたします。

活用事例はこちら

研修パッケージとは…

 放送大学教授・中川一史先生をはじめ、情報教育に先進的に取り組まれている現場の先生方と共に開発された研修セット。
 校内研修はもちろん、地域の学校の先生方を対象とした集合研修において、どなたでも簡単に「情報活用能力」を育成するための視点や工夫が詰まった研修が行えます。

※「研修パッケージ」は小学校用教育統合ソフト<キューブきっず>、表現活動支援ソフト<伝えるチカラPRESS>に同梱されています。

受講者にも!講師にも!使いやすいコンテンツをご用意!

校内研修や集合研修で、無理なく専門的な研修ができるようなコンテンツをご用意しました。


4つのアプリケーション


テンプレートや写真素材

受講者用コンテンツ

情報活用能力を育むアプリケーションの体験が手軽にできます!
作成するものに応じた4つの専用アプリケーションを体験いただけます。研修の中で手軽に使えるよう、必要な素材やテンプレートが用意されています。


ワークショップの手引き


提示用スライド

講師用コンテンツ

研修にすぐご活用いただけます!
研修の流れや進行上のポイントが掲載された「講師用ワークショップの手引き」や「資料スライド」「ワークシート」などがパッケージされていますので、そのまま使用すればすぐに研修会を実施することができます。

詳しくはこちらをご覧ください

金沢星稜大学・佐藤幸江先生に聞く研修パッケージを活用した研修のポイント

金沢星稜大学
人間科学部 こども学科 教授
佐藤 幸江 先生

研修パッケージの開発にも関わられた金沢星稜大学・教授の佐藤幸江先生に、研修を組む際のポイントをお伺いしました。

 現行の小学校学習指導要領・国語では、言語活動の例として「疑問に思ったことを調べて、報告する文章を書いたり、それを学級新聞などに表したりすること」[第3学年及び第4学年 2 内容 B 書くこと (2) イ] 「編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読むこと」[第5学年及び第6学年 2 内容 C 読むこと (2) ウ]などが示されていました。

 これまでも行われてきたこのような言語活動の中で情報活用能力を育成するには、実際に児童はどのように思考し、どのようなところでつまずくのか、指導のねらいは何なのか、どのような指導方法があるのかなどに関して、教師が把握しておくことが必要です。

 研修パッケージのワークショップでは、「知識・理解」「構想・作成」「発表・評価」の講義と演習を通して、児童がどのような思考のプロセスを踏むのかという体験と、教師として必要な配慮事項などを学ぶことが可能です。ぜひ、様々な地域や学校で本パッケージを活用していただきたいと考えます。
 実際に千葉県・船橋市にて実施された研修会の様子とともに、本パッケージの活用について解説していきたいと思います。

体験を通して指導のポイントをおさえる

研修パッケージを活用した研修

講師 金沢星稜大学 教授 佐藤 幸江 先生

主催 千葉県 船橋市教育委員会

活用した研修パッケージ 新聞制作を体験!

研修パッケージ 「新聞制作を体験!」
ワークショップの手引き

 2017年8月、千葉県船橋市総合教育センターで、市立小学校の80名の先生を対象に、国語科指導研修として金沢星稜大学の佐藤幸江先生を講師に招き、新聞制作を通した学習の体験ワークショップが行われた。

 はじめに佐藤先生より講義があった。情報技術が日々進歩する社会で子どもたちに求められてくる能力として、想像・創造・問題解決の場面で知識を活用できる能力や情報機器を活用できる能力を挙げた。さらに新聞を使った学習を例にとりながら、それらの能力の育成のためにどのような授業を行えば良いのか解説があった。その後、実際に「新聞制作」の授業を体験した。児童側の立場で授業を体験することによって、協働学習の効果や指導のポイントの重要性がより理解しやすくなると佐藤先生は言う。

 今回は、市内全域から先生方が集まる夏季希望研修での実施ということもあり、「今回の研修で体験する内容や、それを通して考えたこと・感じたことをそれぞれの学校の校長先生に報告する」という課題設定をし、4人1組で1枚新聞を制作した。参加者や研修の実施時期・場所等を考慮し、内容やテーマを柔軟に変える、佐藤先生の工夫が表れた課題だ。新聞制作体験は<研修パッケージ>の「新聞制作を体験!」のシナリオに沿って進められた。

①ワークショップのねらいをとらえる

提示用スライドを使用

 まず、導入用のスライドを使ってワークショップのねらいや流れ、新聞制作指導における注意点等を解説しました。今後の見通しや指導のポイントを明確にしておくことで、自分が指導する立場になったときにどうするか、イメージしながら体験活動をすることができます。

②新聞記事の内容を検討する

ワークシート「新聞記事を書くポイント」を使用

 記事を書くためには、事実を正確に把握することが必要です。今回は、ワークシートを配布し、書き込みながら伝えたいことを整理していきました。グループでの話し合いの時間もとり、見出しや記事の内容の検討等をしました。授業では、合意形成をしながら話し合いを進めるようにするとよいでしょう。納得できないところはしっかりと質問をすることで、対話的な授業が展開されます。

③個人で記事を書く

新聞原稿ワークシートを使用

 検討して決めた新聞の内容に合わせて、個人で「新聞原稿ワークシート」に下書きをしました。国語科では、一人ひとりの書く力を伸ばすことも大事ですので、このような個人で思考する時間を設定するとよいでしょう。そうすることで、グループでの検討の時間が充実してくるのです。

④グループで記事を練り合う

 個人で書いた原稿を、グループで話し合いながら1つの記事に練り上げました。お互いの意見を言い合う中で、「自分たちが伝えたいことは何か?」という新聞制作の目的が明確になっていきます。授業では、例えば、もう1枚原稿用紙を用意し、それぞれの優れた記述を寄せ合って清書することや、あるいは、ひとつの原稿を下敷きとして、より伝わりやすい文章に修正したり、写真にぴったりな語彙を選択したりすることなどが考えられます。ここは、児童の実態に合わせて方法を選択するとよいでしょう。

⑤タブレットPCで新聞制作

<伝えるチカラPRESS>「新聞」を使用

 タブレットPC未経験の先生方に操作体験をしていただくことも研修のねらいの1つでしたので、グループに1台のタブレットPCが用意されました。記事は新聞制作専用のアプリケーション(<伝えるチカラPRESS>の「新聞制作」)を使って制作しました。グループで活動したことにより、お互いに操作の仕方やタブレットPCを使って新聞制作をすることの利点等を話し合うことができたため、とても盛り上がっていました。

⑥評価

自己評価シート

 当日の研修では時間の都合で割愛しましたが、本来であればここで評価活動が入ります。見出しや記事の内容、写真との整合性などの観点から評価のポイントを示した「自己評価シート」を使えば、ワークショップ内での評価活動の疑似体験はもちろん、実際の授業でそのまま活用することもできます。児童の実態に応じて、項目を絞る等の調整をするとよいでしょう。また、相互評価の観点としても利用できます。その場合は授業のどの場面でどのような評価をするか事前に設定しておきましょう。

⑦研修を振り返る

提示用スライドを使用

 最後に、行った研修を振り返り、新聞制作から考えられる学習課題や教師の配慮点といった視点からポイントを整理しながら解説し、実際の授業へのヒントを紹介しました。

受講者の声
  • 具体的な使い方がわかる研修なので、学んだことを授業に反映させやすいです。ワークシートもそのまま授業に使えそうです。
  • ICTを使うことが主流になっていると感じます。研修を受けて、わたしもしっかりと向き合いたいという気持ちになりました。
佐藤幸江先生からのコメント

 日本の教師は、一斉指導に関するノウハウを蓄積し、児童に高い学力を育成してきました。けれども、これからの変化の激しい時代に生きる児童に「生きる力」を育むには、これまで以上に創意工夫のある教育活動が必要になってきます。どういう力を育成するのかという学力観や「教師主体の伝達式一斉指導」という授業観を、変換する時期に来ていると言えるでしょう。相手意識・目的意識を明確にし、学習者が主体的に取り組む授業、互いの基礎的・基本的な知識及び技能を活用し交流しながら課題を解決していく授業など、先生方の授業の引き出しを増やしていっていただければと思います。

 

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