校門をくぐるとまず、赤を基調としたデザインの、竜宮城のような校舎が目に飛び込んでくる
柱に彫刻された文字
理科室の近くでは生き物の名前など、各教室にちなんだ内容になっている
陽だまりサロン
地域の方の憩いの場。子どもたちもよくここにきてお年寄りの方と一緒に遊んでいる
談話室
各教室に設置されている。ここで子どもたちが話したり、先生と話したりする
ジャブジャブ池
子どもたちがよくヤゴを捕まえて遊んでいるらしい。冬場は氷が張るので、上に乗って遊ぶことができる
教室の外は自然いっぱい!右側の大きな木は「木登りの木」と呼ばれていて、子どもたちが木登りをしているそうだ
校舎と自然と足洗い場。笠原小学校は緑がいっぱいである
笠原小学校ができた理由
「世界のどこにもないまちを創る。」初代町長の齋藤甲馬氏はそんな思いを持っていた。そして、象設計集団の建築家の一人である富田玲子氏はこの思想に共感をもった。笠原小学校ができる前、この土地は「笠原沼」という沼だったのだそうだ。何度も足を運び、この地の風景を見てきた富田玲子氏は、「宮代の土地から、自然にわき出てきた。そういう学校をつくりたい。」と思うようになったという。2つの思いが重なってできたのが、緑豊かで開放感あふれる笠原小学校である。
3つのコンセプトに秘められた思い
学校は町:解放的な空間が子どもたちの感性を育む
笠原小学校の廊下は吹き抜けになっており、まるで屋外にいるようである。子どもたちに感性豊かに育ってほしいという思いから、学校が開放的な空間に作られたのだ。そんな校内の一角にある「陽だまりサロン」は、子どもたちが地域のお年寄りと交流する場になっている。また、「笠原祭り」という地域全体のお祭りも開催され、子どもたちは様々な世代の人と交流している。また、建物の外は緑豊かで、校庭では春になると、薄紅色のハナミズキと紫色の藤の鮮やかなコントラストが素晴らしい景色になる。学校行事の中には、この学校の景観を活かしたものもある。例えば、春に開催される「藤祭り」では、俳句大会が行われるそうだ。このような環境だからこそ、子どもたちは感性豊かに育っているのだろう。
教室は住まい:思わず「ただいま!」と言ってしまいたくなる教室
各教室は1つの家としてとらえられている。外で遊んできて「ただいま!」と家の中に戻ってくるような造りになっている。また、外から帰ってきたら手を洗えるように、各教室に流しも設置されている。さらに、教室の中には「談話室」と呼ばれる小さな空間があり、そこは部屋のような役割だ。まさに"家"なのだ。教室を我が家のように広く使ってほしい、という思いからこのような造りになっている。広さは一般的な教室の1.3倍。アットホームで広々とした教室だからこそ子どもたちは安心できて、心に余裕ができるのだろう。
学校は思い出:自然豊かな環境で学んだことは財産になる
同校で教員として勤務していた経験を持つ校長先生によると、笠原小学校の子どもたちはとても好奇心旺盛で、今も昔も、自分から行動する力がとても強いそうだ。また校長先生はその理由について、「普段の遊びの中で自然を愛する気持ちや、愛校心が育つということです。この自然豊かな環境で学んだことは財産になるので、この環境はとても大事なんです。」と語ってくださった。
また、先生たちも校門のペンキがはがれていたら、自分から進んで直しているそうだ。子どもたちだけでなく、先生たちもまた、この学校に勤務したことを誇りに思っている。校長先生は、「そんな先生たちの姿を見て、育ってほしいと思っています。」ともコメントしてくださった。笠原小学校の環境は、先生たちと子どもたちが、お互い学び合う場なのであった。
学校の校歌にも注目!
「笠原小学校校歌1番」より抜粋
「なぜ学ぶ 何を学ぶ どう学ぶ どう生きる・・・」と自分から学び方を考え、体験を通して学ぶことの大切さを唄ったこの歌は、学校の設計に込められた思いと、共通している部分がある。