わが校自慢

Jiman

校庭にそびえる日本一の大ケヤキ
冬の寒さに耐え、夏には若葉を茂らせて長い歳月、子どもたちの成長を見守っている

山形県 東根市立東根小学校

 「すばらしい校舎」、「めずらしい施設」、「ユニークな活動」など・・・。
そんな"わが校の自慢"をレポートするコーナー。
第8回目は、山形県東根市立東根小学校にある"大ケヤキ"です。
「東根の大ケヤキ」として、社会科の地図帳にも載っています。
地元の人々の誇りでもある巨木と子どもたちとの関わりをご紹介します。

2016/07掲載
※ご所属先は、取材当時のものです。

「大ケヤキのある学校」として、みんなの誇りになっている。「葉っぱが地面に落ちる前に3枚キャッチすると願いがかなうんですよ」と子どもたち。

※大ケヤキは保護のため根元付近に立ち入ることはできませんが、取材のため許可を得て撮影しています。

東根小学校は、東根城の本丸跡にあり、校地の西南に城壁が復元されている。

玄関を入ると、まず大けやきの妖精「ケヤリン」が出迎えてくれる。東根小のマスコットキャラクターで、さくらんぼが大好き。

「東根の大ケヤキ」と呼ばれ、国指定特別天然記念物に指定

校長 矢口 広道 先生

 小高い丘から町並みを望む東根小学校は、かつての東根城の本丸跡にある。校門の前に立つと、目の前にその姿を現わすのが大ケヤキである。樹齢は1,500年以上と推定され、今も豊かな緑をたたえている。大きく枝を広げて天空をおおい、高さは約28メートル、幹周は16メートルにおよぶ。この「東根の大ケヤキ」は、日本ケヤキ番付表では東の横綱を張る日本一のケヤキで、昭和32年にはケヤキで唯一、国指定特別天然記念物として指定されている。

訪れる人が絶えない名木
総合的な学習の体験活動にも発展

大ケヤキの前に据えられた横綱。重さは約300キロもあり、子どもたちと保護者、地域の人たちが協力して完成させた。

横綱を作るために田植えからスタート。刈り取った稲が横綱の材料になる。

みんなで力を合わせて巨大な綱をより合わせる。1本が100キロ!

 老樹とはいえ初夏を迎えれば萌黄色の若葉が勢いよく芽吹き、力強い生命力に胸を打たれる。日々、遠方からも訪れる人が絶えない名所・名木のため、いつでも校内に入って見ることができるように配慮されている。取材当日も「東京から帰省したので大ケヤキに会いに来ました」という卒業生が大ケヤキを見上げていた。

 学校や地域のシンボル的存在でもある大ケヤキは、5年生からの総合的な学習の体験活動につながっている。毎年4月に同校地区内で繰り広げられる「大ケヤキ横綱パレード」に向けて、前年から準備が始まるのだ。

 大ケヤキに飾る巨大な横綱を作るため、まず5月に稲わらを作るための田植えからスタート。泥だらけになりながら作業に励む。と同時に、改めて大ケヤキや地元について調べることで、1,500年続く命の重さや、東根のことを学ぶ機会を得ている。遠藤信也教頭によれば、「自分たちが住んでいる東根の歴史の深さや素晴らしさを、子どもたちが実感できる学習になっています」とのこと。

 そして秋には稲刈りを行い、刈り取ったわらで2月にはいよいよ巨大横綱作り。保護者や住民の方々と協力しながら縄ないをして、100キロほどの大綱3本と格闘しながら重さ約300キロの横綱へと仕上げていく。

子どもたちの間に自然に受け継がれる
大ケヤキへ「行ってきます」「さようなら」

子どもたちが作った大ケヤキのパンフレット。同校には「けやきホール」があり、大ケヤキに関する資料が多数展示されている。

 6年生になると「さくらんぼ環境ISO」の一環として植樹に取り組む。先生方が大ケヤキの種子を拾って芽吹かせた苗を、6年生が一人一株ずつ育て、かつて鉱毒で荒廃した足尾銅山に植樹するという活動である。日光方面への修学旅行の行程の一つとして、子どもたちは「1,500年以上生きた大ケヤキの苗なら、環境が厳しい足尾銅山でもたくましく生き延びてくれるだろう」という願いをこめて植樹している。

 子どもたちの間でいつの間にか広まった伝説もあるという。「葉っぱが地面に落ちる前に3枚キャッチすると願いがかなうと言われています」と、身振り手振りで葉っぱをキャッチする様子を教えてくれる様子は、まるで大ケヤキといっしょに遊んでいるようで楽しげだ。

 また、下校時に子どもたちは、大ケヤキに向かって「さようなら」とあいさつする。入学した時からの習慣で、先生方が教えたわけではなく自然に受け継がれてきた。遠足や修学旅行に出かける際や帰ってきた時にも「大ケヤキさん、行ってきます」「大ケヤキさん、ただいま」のあいさつをする。

 矢口広道校長は、こうした普段の子どもたちの様子に「無意図教育」の大切さを実感しているという。

 「大ケヤキをいつも身近にして過ごすことで、自然の力の神秘やたくましさを肌で感じたり、自然への畏敬の念を抱くようになったりと、子どもたち自身が感じて考える。長年の伝統や校風として、そんな無意図の教育を尊重しています」

 卒業生はみな、「大ケヤキのある学校で学んだ」ということを誇りにしているという。大ケヤキが育み、受け継がれる豊かな心がまた、大ケヤキを見守っていくことにもつながっていくことだろう。

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